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薫と有紀の日曜日もダイジョブよ!

SF+ロマンス+複雑な設定=混ぜるな危険!のはずだが…      映画『九龍ジェネリックロマンス』

2025年08月25日

[薫と有紀の日曜日もダイジョブよ!]

この作品のさらに詳しい情報はコチラ→https://kowloongr.jp/movie/index.html

© 眉月じゅん/集英社・映画「九龍ジェネリックロマンス」製作委員会

 今回はエンディングの感想から…。

 それは本編の最後ではなく、出演者やスタッフの名前が下から登ってくるエンドロールの途中から始まる。長さはおよそ4分間あったから、もはやショート・ムービーだ。

 ハリウッド作品でもエンドロールの後で次回作のほのめかしなどが登場するが、長くても1分程度だろう。

 その内容は、多くの観客が望むであろう理想的なものだったが、観ていて照れてしまった。本編の最後ではなくエンドロールの後に登場させたのは、制作陣の“照れ隠し”と思えた。

主人公・ 令子の記憶や行動は「なぜ?どうして?」という疑問のオンパレード…。

 原作は、いまも連載が続いている眉月(まゆづき)じゅん氏による人気漫画(集英社のヤングジャンプ掲載)。漫画のファンにとっては、この実写映画のオリジナル・エンディングが楽しみだし、すでにTVアニメも今年6月に13話で完結(有料だが各配信サービスで現在も視聴可能)しているので、そちらのエンディングとの比較もできる。

 ネット上には「Wメディア化 公式サイト」というアニメと実写映画のPRサイトがあったから、巧妙なマーケティングなのかもしれない。

“蛇沼”なる役名もスゴイが、その強烈なキャラを演じきった竜星 涼(右)には脱帽だ。

 舞台は、かつて実在した"九龍城砦"。香港・九龍城地区に築かれていた城塞で、中で生活する人々がいたものの1990年代前半に取り壊され現在は公園になっている。

 全体像はCGで描かれ、日本でも終戦直後まではあった内部の風情を探した結果、台湾でロケが行われた。その雑多な都市空間や“香り”が作品に独特なテイストを与えている。

 そこでのロマンスがタイトルだからラブストーリーだとわかるが、なぜ「ジェネリック」なのか?

 「ジェネリック」=「先発医薬品の特許が切れた後に、同じ有効成分を使って製造・販売される医薬品」のことなので、なんらかのコピーや本物とは違うことがテーマだと推察され、それは“当たらずとも遠からず”という感じだった。

令子と友達になる楊明役は乃木坂46の梅澤 美波。重要なキャラを演じている。

 九龍の不動産屋で働く鯨井 令子(くじらい・れいこ)を演じるのは吉岡 里帆。冒頭からおっちょこちょいな性格が示唆され、彼女がCMで見せるひょうきんなキャラと重なるが、ほぼ180度違う別の表情も見せるので「アレッ?」と思うことがしばしば。

 工藤 発(くどう・はじめ)という役名で登場する水上 恒司も令子と同じ不動産屋の社員だが、他人には無頓着かつ空気を読めない人物として描かれるので「この2人が本当に恋に落ちるの?」といった印象。

 お話が進むにつれて主人公2人の“本質”が明らかになり、いかに難しい演技が求められていたかがわかってくる。

 そこに絡むのが、巨大製薬会社の社長・蛇沼(へびぬま) みゆき役の竜星 涼。人の心や記憶に関わる突飛な研究を行っているが、この辺りがSFチックかつ超複雑な設定になっている。

 本作はラブロマンスでありながらSF要素もあり、登場人物それぞれのバックボーンが複雑で、あまりにもピースが多いジグソーパズルのように見えたが、最後には綺麗な1枚の絵画に仕上がるから驚きだ。

九龍で複数のアルバイトをしている小黒役は花瀬 琴音(右)。原作漫画とは違う設定で観るものを驚かせる。

 エンディングについて「多くの観客が望むであろう…」と書いたが、そう感じたのは作品から伝わってくる“不穏な空気”が、いまの現実社会にも多かれ少なかれあるからだ。逆に言えば、求めても手に入らない理想論のようなお話を見せてくれたのかもしれない。

 
※この作品は8月29日(金)から、T・ジョイ博多、ユナイテッド・シネマ キャナルシティ13、TOHOシネマズららぽーと福岡、ユナイテッド・シネマ福岡ももち ほかで全国ロードショー公開されます。

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