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薫と有紀の日曜日もダイジョブよ!

「コザ暴動」の再現は驚愕の映像で…映画『宝島』

2025年09月11日

[薫と有紀の日曜日もダイジョブよ!]

この作品のさらに詳しい情報はコチラ→https://www.takarajima-movie.jp/

©真藤順丈/講談社 ©2025「宝島」製作委員会

 「渾身の力作」とはまさにこれのことだ。永山瑛太が演じるコザの英雄・オンちゃんなる人物がある日突然姿を消す。いくらなんでも「なぜ彼はいなくなったのか?そして、どこへ行ったのか?」を3時間11分にわたって描くのは無茶だと思ったが、最後の最後まで目が離せなかった。

 オンちゃんはいったいどうなったの?という疑問は“ノドに刺さった小骨“のように気になり、早くご飯を丸のみしたい子供のころの記憶がよみがえった。これが物語の縦糸で、横糸として“沖縄の苦悩”がクローズアップされる。制作陣が伝えたかったのは明らかに後者だから、予告編で彼の行方が強調されるのはネタバレを防ぐためだろう。

オンちゃん(永山瑛太)と恋仲のヤマコ(広瀬すず)は、音信不通になった彼の行方を案じる一方、いつかは戻ってくると信じている様子…。

 原作は真藤順丈氏の第160回直木賞受賞作品。日本の敗戦後、アメリカ統治下にあった1952(昭和27)年のコザ(現在は沖縄市の一部)からはじまり、1972(昭和47)年の沖縄本土復帰前夜までが描かれる。

 いきなり、英雄とされるオンちゃんがリーダーの“戦果アギヤー”なる集団が、こともあろうにアメリカ軍基地から物資を盗むシーンで幕が開く。“戦果アギヤー”=「戦果を挙げる者」という意味で、アメリカ軍から盗んだ戦利品を困っている人々に配る義賊として描かれるが、明らかに犯罪集団。今ならトランプ大統領が激怒して「日本への関税は1000%」などと言い出しかねない重罪だ。

 この“戦果アギヤー”も当時実際にあった話で、最後まで沖縄における歴史上の事実と作者の創作によるフィクションとが絡み合って話は進む。

 オンちゃんを取り巻く主要な人物は、彼と恋仲のヤマコ(広瀬すず)、親友で“戦果アギヤー”のメンバー・グスク(妻夫木聡)、同じくメンバーでオンちゃんの実の弟レイ(窪田正孝)の3人。いずれも突然の失踪に戸惑い混乱するが、最終盤まで真相をつかむことができずに翻弄される。

オンちゃんの弟レイ(窪田正孝)が理不尽な世の中に反発するのは、沖縄が背負う運命とも関係があるようで…。

 オンちゃんの突然の失踪から6年の月日が流れ、3人はそれぞれの道を歩む。グスクは彼の行方を探るのに最適な職業・刑事になり、レイは地元のヤクザ者に身を落とす。ヤマコは教師になって日本の明るい未来のために尽力する。

 そんな彼らを歴史上の非情な事実が襲う。アメリカ兵による犯罪や交通事故がもみ消されるのは日常茶飯事。1959年6月にアメリカ軍の戦闘機が今のうるま市で墜落して小学校の校舎に激突炎上した事故。1969年7月の知花弾薬庫(沖縄県美里村)での致死性ガス放出事故に対する抗議活動。極めつけは1970年12月20日未明に起こった「コザ暴動」だ。

 アメリカ兵による交通事故をきっかけに勃発した嘉手納基地周辺での暴動では75台以上のアメリカ軍車両が破壊や焼き討ちにあったとされる。このシーンは息を飲むほどの映像で、当時の車両はもちろん、基地周辺の町並みも忠実に再現され「これだけのオープンセットを組むのは大変だったろうな~」という印象。

 しかし、後から東宝スタジオの屋内で撮影された映像にVFX効果を施したものだと知らされたのだがまったく信じられなかった。スクリーンからはスタッフの覚悟のようなものも感じられ、これを映画館で見ずしてどこで見るのかという仕上がりだ。

オンちゃんを探すために刑事となったグスク(妻夫木聡)だが、実態はアメリカ軍の下請け的な捜査で…。

 当然ながら最後の最後にはオンちゃんの行方が明かされる。「実はアメリカ軍のMPから逃れるためだった!」なんてありきたりの話だったらガッカリだが、そうはならない。それは言わば「人間の生き方」に通じるもので、彼は沖縄の苦悩から逃げなかったことがわかる。

 ただ、日本の敗戦から80年がたった現在も沖縄の苦悩は続いていて、それは明らかに“ノドに刺さった小骨”のはずだ。ところが、その苦悩についてご飯を丸のみした記憶はない。ということは、自分が「小骨の存在をなかったことにしておきたい」と思っていたことがわかり愕然とするエンディングだった。
 

いくつかの“沖縄の悲劇”が忠実に映像化されて…。

※本作は9月19日(金)から T・ジョイ博多、ユナイテッド・シネマ キャナルシティ13、ユナイテッド・シネマ福岡ももち、TOHOシネマズ ららぽーと福岡 ほかで全国ロードショー公開されます。

※小学生の観覧には、親又は保護者の助言・指導が必要な【PG12】指定作品です。

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