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KBC Sunday Music Hour(毎週日曜あさ9:00~ごご5:45)

薫と有紀の日曜日もダイジョブよ!

久々の痛快時代劇だ! 映画『木挽町のあだ討ち』

2026年02月26日

[薫と有紀の日曜日もダイジョブよ!]

この作品のさらに詳しい情報はコチラ→https://kobikicho-movie.jp/

©2026「木挽町のあだ討ち」製作委員会 ©2023 永井紗耶子/新潮社

 つまりは「江戸の木挽町を舞台にしたスパイ大作戦」。

 「何バカなことを言っているの!」となりそうだが、トム・クルーズ主演の『ミッション・インポッシブル』のルーツで、1960~70年代に「おはよう、フェルプス君…」でおなじみになったテレビドラマ版の「スパイ大作戦」を思い出させる展開だ。

 永井紗耶子氏の原作(新潮社/2023年)は直木賞と山本周五郎賞をダブル受賞しただけあって「謎解き」「人情噺」「頭脳戦」「痛快時代劇」「エンタメ」などなど…いくつもの要素がからみあっているから見ごたえがある。この実写映画の前に歌舞伎作品として上演されたのも納得の1本だ。

北村一輝が演じる作兵衛の悪人ぶりは惚れ惚れするほどで…。

 舞台は、仇討ちがまだ合法だった文化七年(1810年)、芝居小屋「森田座」で上演されていた「仮名手本忠臣蔵」の千穐楽がちょうどはねたところ。帰路につく大勢の観客によって道はごったがえしていた。

 そこに肩で風を切って現れたのが作兵衛なる人物。変な褒め方だが、演じている北村一輝の悪人面は完璧だった。そう、彼こそが美濃遠山藩の伊納家当主・伊納清左衛門殺害の真犯人なのだ。

 ほどなくして清左衛門の息子・菊之助(長尾謙杜)が登場。父の恨みを晴らすための「本物の仇討ち」が始まる。最初は難儀するものの芝居帰りの人々が取り巻く中で見事に父親の仇をとったものだから一部始終がお江戸の話題となる。
 
 その1年半後、やはり伊納家とかかわりのある浪人侍・加瀬総一郎(柄本佑)が江戸にやってくる。菊之助に討ち取られた作兵衛とは美濃遠山藩で多少なりとも縁があり「人殺しとはいえ線香だけでも墓前に…」などと言い出す。

アイドルグループ“なにわ男子”の長尾謙杜(右)が演じる菊之助は17歳という設定で、父親の仇をとるには心もとない印象だったが…。

 今回の仇討ちにモヤモヤした感覚を持っていた総一郎は、裏庭が現場となった「森田座」の関係者からいきさつを聞き出そうとする。この「モヤモヤ感」こそが本作の重要な伏線で、タイトルが「仇討ち」と漢字表記ではなく「あだ討ち」になっているところに通じる。

 柄本佑の演技は秀逸で、彼を主人公にしたスピンオフ・ドラマも十分に成立する。当初は、あたかも“昼行燈(ひるあんどん)”のようなキャラで相手の懐に入り込むが、実は高度な分析力を持っていて真実に迫ろうとする。

 その“空気感”は「刑事コロンボ」のそれに近いものだった。

 一方「森田座」の関係者は、新作歌舞伎を創作する渡辺謙、芝居小屋への客寄せ役の瀬戸康史、舞台での役者に殺陣 (たて)を付ける滝藤賢一、自らも女形として舞台に立っていた高橋和也、腕の良い小道具係の正名僕蔵…といった演技巧者が「モヤモヤ感」の一端を担っていると思わせる。
 
 さらに、大御所の石橋蓮司に『侍タイムスリッパー』の山口馬木也は「えっ!それだけ!?」という贅沢な起用。テレビドラマの『科捜研の女』でおなじみの沢口靖子も登場して東映・太秦つながりを感じさせ、物語終盤に登場する劇中劇「仮名手本忠臣蔵」の奇抜な展開は制作チームの余裕の表れだった。

渡辺謙は、歌舞伎の世界に身を置く戯作者というキャラになりきっていて…。

 やはり歌舞伎を扱った作品で、昨年から今年の日本映画界を席巻したどころか、第98回アカデミー賞®のメイクアップ&ヘアスタイリング賞ノミネートの『国宝』がお好きだった方にも自信を持ってお勧めできる。

 あちらは「芸の道で苦悩する歌舞伎エリート」を描いていたが、こちらは江戸庶民の歌舞伎文化を通じて、理不尽な組織にあらがう者、強者から虐げられし者、生きづらさを感じる者など現代社会にも通じる弱者にスポットをあてるという違いはあるけれど…。

柄本佑が演じる浪人侍・加瀬総一郎からも“あやしい香り”が漂ってきて…。

※この作品は2月27日(金)から T・ジョイ博多、ユナイテッド・シネマ キャナルシティ13、ユナイテッド・シネマ福岡ももち、TOHOシネマズ ららぽーと福岡 ほかで全国公開されます。

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