【菓子職人❶】「江戸と令和の平戸菓子」 熊屋誠一郎さん
2026年08月16日

創業1762年の老舗「牛蒡餅本舗 熊屋」の8代目、熊屋誠一郎さんは「現状維持は難しい」と語ります。
熊屋を代表する銘菓「牛蒡餅」は、江戸時代から平戸に伝わる郷土菓子で、200年以上も前から地元の人々に親しまれてきました。
熊屋さんは、この老舗の伝統を守りつつ、「翠簾(すいれん)」という抹茶のテリーヌを新たに生み出し、より美味しいお菓子を届けられるよう日々心を込めて菓子作りに励んでいます。

熊屋さんは伝統を守る一方で、新たな挑戦も続けています。それが、抹茶のテリーヌ「翠簾(すいれん)」です。
「時代の中に埋もれてしまう」という危機感から、新しいお菓子の開発を決意。かつて南蛮貿易の拠点として栄え、砂糖が持ち込まれ菓子文化が広まった平戸には、新しいものを受け入れる土壌があると熊屋さんは信じています。
その歴史的背景が、新しい感性のお菓子を生み出す原動力となりました。

「自分の会社という意識は全くなくて、あずかりものだと思っているんです」。
熊屋さんは、店の歴史をそう語ります。先代から受け継いできた大切なものを、きちんと次の代に渡すこと。
自身を「太い流れの中の一つの歯車」と捉え、未来へ伝統をつなぐという強い使命感を胸に、今日も菓子と向き合っています。

熊屋さんが未来に残したい風景は、生まれ育った「平戸市魚の棚町」の通りです。
「自身も熊屋も地元の人に育ててもらった」と語るその場所には、単なる愛着だけでなく、地域と共に歩んできた歴史への深い感謝の念が込められています。
この町並みが未来永劫残ってほしいという願いは、彼の菓子作りへの想いと深く結びついています。