「生きた文字」(福岡県福岡市)
2023年04月16日
鉛の活字を一つずつ拾い並べて印刷する活版印刷。
明治から100年間、日本の印刷を支えてきた一つの文化だ。
福岡市城南区鳥飼にて印刷所「文林堂」を運営する山田善之さんは、今でも一枚一枚手作業で名刺やポスターなどを印刷している。
壁に並ぶ活字は、大きさの違いや欧文体も含めれば10万本以上はある。
活字はわずかな凹凸でかすれが出るため、圧を均一にするために活字の裏に薄紙を入れたりして調整をする。
余白とのバランスや文字間のバランスなど、空間を見て活字を組み、版を作る作業は緻密なパズルのようで、大変だけど楽しい作業でもあるという。
幼い頃から父の印刷所で活版印刷を手伝い、印刷物や活字に囲まれて育った山田さん。
近所から名刺などの注文を取ってきて、お小遣いを稼いでいたという。
名刺を渡して喜んでもらい、お金と飴をもらう。
そこには昔の人間らしいやり取りがあった。
活版印刷という技術があったこと、そういう時代があったことを後世に伝えることに注力しているという。
そんな山田さんが未来に残したい風景は「樋井川」だ。
川沿いの草ヶ江小学校出身の山田さんにとって、都会にありながら自然を身近に感じられる樋井川は、とても親しみがあり、思い入れのある川だ。
満潮時には海の生き物を見ることも珍しくなく、子供の頃はよく川遊んでいた。
周りの景色は、今では大きく変わってしまったが、樋井川を見ればいつでも子供の頃の思い出が蘇る。