「直して繋ぐ」(福岡県太宰府市)
2024年06月02日
太宰府市に工房を構える「漆と金継ぎ さらは」。
金継ぎという言葉を耳にしたことはあっても、実際に作業を見たことがある人は少ないのではないだろうか?
だが、金継ぎ師・樋口麻耶さんの元には、全国から年間300件以上の依頼があるという。
「金継ぎ」を簡単に説明すると、「漆を使って、割れた器を接着し、金粉で装飾する。」ということになる。
漆器などに使われる「漆」は「塗り」として重宝されているイメージだが、「接着」の強度も高く、一度接着するとなかなか割れない。
そんな金継ぎの作業の中で、何回も漆を塗っては乾かし、金粉を塗って器の硬化を強めるなど、様々な技術がある。
そしてひとつだけ確かなことは、割れた器の破片が「傷跡」として残るのではなく「金継ぎ」として美しく強くなることだ。
金沢の大学で漆芸を学び、福岡へ帰郷した樋口さん。
小さな風が作業場に吹くと、器の上の金粉が飛ばされるほど、繊細な仕事を日々行っている。
そのような中で私が疑問に思ったのは、「直す」という行為だった。
「直さなくても買いかえればいいのでは…」と。
その問いに樋口さんは「大切なものが直ると嬉しいですよね。」と答えてくれた。
その言葉に私は、「技術」と「気持ち」の両方が備わってこそ職人なのだと強く感じた。
そんな樋口さんが未来に残したい風景は「大宰府政庁跡」だ。
子供のころ、遠足の定番の場所だったが、当時思い入れは無かったという。
だが金沢市から戻り、改めて政庁跡に立つと、1,300年前の政庁跡が残っていることに、太宰府市の壮大な歴史と営みを感じたそうだ。
今では家族でよく出かけるそうで、緑の中で食事をしたり、子供と遊んだりすることでリラックスしているという。
先人の知恵が集結していた大宰府政庁跡。
古の九州を支えた場所は今、人々の思考を少し休ませてくれる交流場にもなっているようだ。