「365日の桜色」(福岡県朝倉市)
2025年03月30日

朝倉市秋月にある「工房夢細工」では、日本でもかなりめずらしい「天然染料の桜染め」が行われている。
職人は小室容久さん。草木染め職人として40年以上のキャリアを持つ染色家だ。
特に「桜染め」には強いこだわりがあり、「自分で飲むことができるもの」しか使わないというほどだ。

天然染料の桜染めで最もむずかしいのは「ピンクの染料を作ること」。
約3年かけてピンクの染料を生み出した小室さん。
ヤマザクラのつぼみと枝を乾燥させて、約4ヵ月間、炊いては冷ましてを繰り返す。
そしてようやく「桜色」が完成するのだが、それは「桜色」であって「ピンク」ではないらしい。
桜色にはピンクの他にオレンジや黒などの色が混ざっているのだという。

その桜色からピンクだけを抽出するのが、小室さんの真骨頂だ。
だが、その抽出がかなり難しいそうで、どれくらい難しいかを聞いてみると、「完成されたうどんの汁があって、そこから昆布出汁、カツオ出汁、醤油を分けるような作業」だという。
普通に考えれば無理だと思えてしまうが、「でも、それを僕は出来る」と小室さんは答えてくれた。
その方法を聞くと「桜と会話することが大事」なのだという。
それがどのようなことか確かめたいならば、ぜひ工房を訪れて欲しい。
予約は必要だが見学は自由。
技術は隠すものではなく伝えていくもの。それが小室さんの考えだ。

そんな小室さんが未来に残したい風景は「秋月」だ。
神戸に生まれ、20代はカメラマンなどを経験し、運命的な場所で草木染めと出会い、染匠となった小室さん。
33年前に工房を構えたのだが、それまでに全国50ヵ所近くを巡り、ようやくたどり着いたのが秋月だった。
水質が良く、寒暖差があって、谷に囲まれている地形なので適度な湿度もある。
それは染め物に必須な条件だという。そして3月末には秋月街道の桜が満開になる。
桜染めを愛する小室さんにとって、秋月は人生にとって欠かすことのできない場所だという。