「馬のパートナー」(長崎県諫早市)
2025年05月11日

長崎県諫早市で「装蹄師」と「削蹄師」の仕事をしている龍田太朗さん。
装削蹄師とは、馬の蹄(ひづめ)の管理を専門的に行う技術者のことで、馬の爪を切り、蹄鉄を取りつけることが主な仕事だ。
現在、龍田さんは装削蹄師をしながら、諌早乗馬クラブでインストラクターをつとめ、さらに現役馬術選手として国体に出場するなど、長崎県の馬術を盛り上げるため、多方面で精力的に活動している。

今回は3歳馬の装削蹄を撮影させていただいた。
作業の流れは、馬の爪に装備されている古くなった蹄鉄をはがし、伸びた爪をヤスリなどで削って、長さを調整。
その後、新しい蹄鉄を蹄のサイズに合わせ取りつける。
蹄鉄は馬の爪を守るためにつけるもので、蹄鉄をつけていないと馬の爪がズレてしまい、ケガの原因になるので、保護の観点からつけられている。
また、馬の爪を切る頻度は40日に1回で、多い日には10頭以上の馬に装削蹄をするそうだ。

馬の蹄鉄は、人間にとって靴のようなものだと龍田さんは話してくれた。
多くの馬は爪が左右非対称になっていて、そのため馬の体にゆがみやひずみが生まれる。
理想は爪を二つに割って左右対称になっていることだが、馬も運動や日頃の環境下でバランスが崩れていくので、それを調整するために定期的な装削蹄は欠かせない。
馬もそのことがわかっているのか、龍田さんが作業をするときはおとなしい。
おそらく気持ちよくなることがわかっているからなのだろう。
ちなみに、前脚の蹄を削蹄する時は馬もリラックスしているが、後脚になると嫌がることが多いという。
何をされているか馬自身が確認できないのが原因なのかもしれない。

そんな龍田さんが未来に残したい風景は「馬が幸せに暮らせる場所」だ。
現在、諫早ゆうゆうランド干拓の里にある馬事公園で、諫早乗馬クラブを夫婦で経営している。
約30頭の馬が暮らしていて、1歳の子馬もいれば、競技を引退した老馬もいる。
多くの馬の蹄の特徴を覚え装削蹄していくことは、非常に大変なことだと思う。
だが、龍田さんは楽しいという。
馬を守るために必要な仕事であり、パートナーにもなれる仕事なので、達成感と満足感が高いそうだ。
そんな龍田さんの夢は、一頭でも多くの馬を幸せにすること。
それは、小学3年生の頃からずっと変わらない夢だそうだ。