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「時代を越える」(福岡県柳川市)

2025年06月29日

柳川市の城郭模型製作工房。
城郭模型に命を込めるのは城郭模型作家の島充さん。
特に再現模型という模型製作にこだわりのある職人だ。
再現模型の製作は、古写真や城郭が記された資料集めから始まる。
今は無くなってしまった当時の姿を証明する唯一の客観的資料が古写真で、模型を製作する前に、写真を撮ったであろう位置、角度から推定して、城郭の構造や丈尺を割り出す。
本当の意味での再現にこだわる島さんにとっては、この作業が何よりも重要で、最も時間のかかる作業なのだと言う。

再現においては形と色の両方が大切で、形は当時の城郭の空間を正確に表し、色は時間の表現を表す。
というのも、再現模型は写真が撮られた当時の城郭を再現するため、その城が建てられた時代からはかなりの時間がたっている。
石垣は汚れ、漆喰の白さも所々失われている。そのため、築城当時から200年たった状態の色で着色していくのだ。
「少しでも現実感のある状態に戻していくことが何よりも難しい。」とこだわる島さんの模型には、その時代の空気を感じさせるものがある。

「過ぎ去った時代は戻すことができないのですが、模型の中であればもう一度当時の景色を見ることができると思います。」と語る島さん。
仕上げの工程として、城郭周囲の木々など自然の表現を終え、最後に空の下で写真を撮り模型製作は完了するそうだ。
まさに、写真に始まり写真に終わる模型製作といえる。
模型完成時の写真を見てみると、虚構の世界であるはずの模型が時代を越え、現代に現れたような不思議な感覚になる。
当時の人々もこの風景を見ながら、風を感じたのだろうか。

そんな島さんが未来に残したい風景は「柳川市島地区の風景」だ。
小さい頃の風景からは変わってしまったが、古い建物や古い木々は残っている。
今の時代に失われてしまった風景を現代に再現する島さんだからこそ、自分の身の回りの風景を、この時代に大切にしたいという気持ちは誰よりも強いのだ。
「今ある風景がこの先ずっと残っているかというと、それはわからないと痛感している。」そう感じる島さんだからこそ、普段からある風景を当たり前に流さない、美しく感じていたいという思いが強いのだ。

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