「糸を纏う」(福岡県小郡市)

「もう40年以上は織物作家として活動しています」と愛らしい表情で話す田篭みつえさん。
田篭さんはイギリスやスコットランドなどで生まれた「ホームスパン」とよばれる技法で、
厳選した羊毛を手織りで作品にしていくことを得意としている。
作品づくりの始まりは、こだわりの羊毛を染色して、紡ぎ車で一本の糸に仕上げていくところからだ。
風が吹くとすぐに飛んでしまいそうな羊毛が、千切れることなく、
田篭さんの手の中で紡がれていく光景は、まさに圧巻だ。

田篭さんの作品で特徴的なものと言えば、「赤」だ。
取材日はインド茜で染めた羊毛を紡いで糸にしていたが、それはとにかく「美しい」の一言だった。
赤は太陽や命、血をイメージさせる色で、見ているだけで元気になるという。

美しい赤色の線が面になっていく光景は、力をくれた。
何万本という糸を縦と横に織っていくことで、完成されていく作品たち。
赤と赤が交わり、また新しい赤が生まれていく。
その理由を聞くと「縦糸と横糸の間に自分の思いを込めているから」だと話してくれた。
血のにじむような思いで、作品たちは生み出されているのだろう。
だけれども、田篭さんの言葉は、それこそが「楽しい日常」なのだと教えてくれた。

そんな田篭さんが未来に残したい風景は「花立山」だ。
のどかな田園風景が広がる小郡市にある、唯一の山だという。
標高130mほどなので散歩コースにはもってこいだ。
結婚を機に小郡市にやってきた田篭さん。
その生活の中で、苦しかったことや、ふと人生を振り返るときもあったという。
だが、そんなときに変わることなく見守るような存在の花立山が、心強かったそうだ。

※この記事は2022年の情報です(「STORY」11月6日放送)。

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