（太田）「ＫＢＣラジオ　みんなで防災！」KBC解説委員の太田祐輔です。

（百市）百市なるみです。

（太田）毎週この時間は、あなたの命を守る防災について考えていきます。

（太田）過去の災害の記録を掘り起こし、「まさか」ではなく「いつか」発生することを前提に防災に取り組むことを提唱している九州大学工学研究院　環境社会部門の西山　浩司助教のお話をお届けしています。

（太田）防災をめぐっては、災害に関して記録した自然災害伝承碑を地図上に残そうという動きがあります。
過去の人からのメッセージである自然災害伝承碑、われわれはそのメッセージをどう受け止めればいいのかを聞きました。

（西山）ハザードマップを単に見て、まぁ危ないってわかるけど、イメージできますか？

（太田）イメージはなかなかできないですね。

（西山）イメージできないですよね。危ないのはわかっているけど、どう危ないのかわからないじゃないですか。その時に、自然災害伝承碑の中に書かれてあることがあるのですね。ここでこういう災害があって、こんな被害になってみんな苦しんだということ書かれているわけですよ。
で、これを教訓にしてみんな早く逃げようねっていう話がそういうところに書いてあったりするのですね。イメージできるのです、そこで。
ここはやっぱし危ないのだ、土石流が起きたら大変なことになるのだと。
だからハザードマップでこういうレッドゾーンとか色々なっているのだなっていう風につなげることはできると思うのですよね。だから、やっぱり自分の災害リスクをちゃんと理解する上で、やはり自然災害伝承碑は非常に大事です。
まだまだ登録されてないものもたくさんありますよね。そういったのをどんどん登録して地域の防災学習とか、防災計画、小中高の防災教育ですね、ぜひ使っていただきたいなと思っています。

（太田）いろんなところに伝承碑があって、何が書かれているかよくわからなかったりとか文字が消えかかっていたりするじゃないですか。そういうのに関する新たな技術みたいなものもあったりするのですか？

（西山）「光拓本」という技術があります。それは何かというと、懐中電灯を色んな方向から当てて、写真を撮って、それを合成する技術があります。それが奈良の文化財研究所かな、そちらの方で開発されたのですね。
それをいま私も使っているのですけどね。見えにくいものは結構見えるようになってくるのですね。もうすでにだんだんと見えにくくなっているものは、もうどんどん写真撮って、「光拓本」をして残していくっていう作業はすごく大事になってきますね。それを自然災害伝承碑の元になるデータ、資料になればいいかなと思っていますよね。

（太田）先生がこう触れたその災害を伝える伝承碑でこういう文字が書かれていてあっという風に気づかされたっていう例はありますか？

（西山）それはですね、うきは市の方の妹川という地区にある神社があるのですけど、そこに石碑があります。で、前から災害のことが書かれていると言われているのですが、見てもわからないのです。
それを「光拓本」にしてみると、「山汐」という言葉が出てきました。「山汐」というのは、筑後地方では土石流を意味します。これが起きたんだなぁということがここでわかりました。
よく読み進めてみると、近くの集落で家が流されたっていう記述があって、もう悲しみに 絶えないっていう言葉が書かれているのです。で、実際その場所を行ってみて、またハザードマップ見てみると、もう見事に流される場所、もうそこに 家があれば確実に流されるような場所だったのですね。
ということは、やはりそういうリスクは当然昔も当然流されたわけですが、これからも当然流されるリスクはあるということですね。
繰り返し災害って起きるのだなというところをそういったところからイメージすることはできると思います。

（百市）西山先生のお話で、ハザードマップを見ることの重みが増したように感じるのですけど、自分の災害リスクはもちろんのこと、同じ地域に住む方々ともいざという時に助け合えるように、少し視野を広げて、広めにハザードマップを見ておくことも大事なのかなと思いました。

（太田）そうですね。そして過去の災害の記録からその過去からのメッセージをきちんと受け止めて、この地域は危ない地域なのだということをちゃんと考えて防災を行っていくことの大切さですよね。
過去の災害から多くのことを我々は学ばないといけないと思います。

（百市）KBCラジオみんなで防災
今週は「過去の災害に学び、どう備えるか　その４」をお送りしました。