日産の減産はオランダのせい!? 米中対立の飛び火で工場が大混乱 KBCラジオで解説した半導体サプライチェーンの危機
福岡|
11/26 12:00

現在、日産自動車の九州工場(主力工場の一つ)では、生産計画が「行ったり来たり」する異常事態が続いています。
経営状況とは裏腹に、売れ筋の車種を多く製造する同工場がなぜ減産に追い込まれるのか。
この裏側には、オランダにある半導体メーカーを巡る米中間の激しい対立が関係していました。
KBCラジオ『KBCアサデス。ラジオ 火曜日』で、株式会社Fusic 副社長の浜崎陽一郎さんが、近藤鉄太郎アナウンサー(コンテツさん)にこの複雑な国際問題を解説し、「日本のチャンス」について解説しました。
【日産九州工場が異例の「行ったり来たり」減産、原因はオランダ?】

浜崎「週末に日産自動車が二十四日から主力の九州工場ですね、減産をするという発表をしました。今月に入って10日、17日、24日と、通常に戻します、減産しますと行ったり来たりしている」
売れ筋車種を作る九州工場が減産するのは異例中の異例。
この混乱の元凶が、オランダにある半導体企業「ネクスペリア(Nexperia)」にあると浜崎さんは指摘します。
ネクスペリアは元々オランダのフィリップスの子会社でしたが、2018年に中国のファンドによって運営されるようになり、現在は中国の半導体会社の子会社となっています。
同社は安価な自動車向けの半導体を製造しており、多くの自動車メーカーがこれに依存していました。
【 アメリカが仕掛けた「ブラックリスト」の飛び火】
問題が表面化したのは、激化する米中対立です。
高性能ではないものの大量に使われる自動車向け半導体も、対立の舞台となっていました。
浜崎「今度はアメリカが中国に仕掛けるということをしていて、中国の企業が作った半導体製品は使わないように(中略)アメリカは実は圧力をかけている 。入っちゃったんですよ。ブラックリスト入りしちゃった。
(中略)アメリカの顔色も立てなきゃいけないから使わないようにしようねっていうふうになるわけなんです。」
この圧力、すなわちアメリカのブラックリストに、中国子会社であるネクスペリアもリスト入りしてしまったのです。
【オランダ政府が「国有化宣言」 → 中国が反発し「製品を返さない」】

ところが、事態はさらに複雑になります。
ネクスペリアは「中堅の半導体メーカーで絶対ここじゃないといけないわけではない」ものの、オランダ政府は自国の企業が使われなくなることを嫌がり、9月末に急遽古い法律を引っ張り出してきて、「この会社はオランダ政府のものです」と言い出しちゃったのです。
これに対し、中国が激怒。
ネクスペリアは製造工程の前半をヨーロッパ、後半を中国で行い、完成品をヨーロッパに戻すというサプライチェーンを組んでいました。
中国側は反発し、「中国で作った完成品はもう本社(オランダ)には返さない」という行動に出ます。
その結果、ネクスペリアに依存していた自動車メーカーが「ヤバい、ヤバい、車が作れない!」と大混乱に。
日産もここに大きく依存していたため、半導体の在庫が入るか入らないかで「作れる/作れない」を繰り返すという、異例の事態に陥ってしまったのです。
【ピンチはチャンス! 九州が世界の工場を取り戻す好機】

この国際的な混乱は、日々のニュースの裏側で進む米中間の「レアアースの輸出をめぐる駆け引き」とも連動していると浜崎さんは指摘します。
しかし浜崎さんは、この危機こそが日本にとってチャンスだと力説します。
浜崎「米中の対立が激しい中、日本においてはもう一度この世界の工場を取り戻すチャンスでもあるということでもあるんですよね。」
かつて、アメリカとソ連が対立していた冷戦時代、日本が西側諸国の「物作りの中心」となり、「世界の工場」としての地位を確立しました。
その地位はその後、より安い製品を作れる中国にシフトしていきましたが、今、米中の対立が深まることで、サプライチェーンから中国を切り離したいというニーズが高まっています。
浜崎「九州は世界の工場の中心になったわけですので、こういったところをしたたかに、したたかに狙うってことをしなければいけないなというふうに思うんですね。」
まさにピンチはチャンス。
半導体大手TSMCの工場誘致(熊本)を例に出し、九州が地政学的な不安定さをチャンスと捉え、「いかにこの世の中の状況を見て立ち回れるか」が今、非常に注目されていると締めくくりました。





