病院が次々閉鎖「もう回らない」 診療報酬アップも「焼け石に水」 福岡の医療現場に悲痛な叫び
福岡|
06/28 18:00

福岡県内で病院の閉鎖が相次ぎ、地域医療への深刻な影響が懸念されています。背景にあるのは物価高騰や人件費の上昇。医療現場では悲痛な叫びが上がり、専門家からは「公的医療はもう回らない」との声も。日本の医療が直面する構造的な問題が浮き彫りになっています。
■赤字55億円「このままでは共倒れに…」

「累積赤字が2025年までで55億円。このままでは両病院が“共倒れ”になってしまう」
産業医科大学(北九州市)の生田正之理事長は、厳しい表情で語ります。北九州市若松区で唯一の二次救急医療機関である「産業医科大学若松病院」は、来年5月をめどに閉鎖し、約10キロ離れた産業医科大学病院に機能を集約することを決定しました。
地域住民からは「存続してほしい」「行きつけがなくなるから困る」と不安の声が上がっています。
福岡県内では、久留米市の「久留米大学医療センター」も経営難などを理由に、来年12月までに完全閉鎖されることになっています。
■物価高騰が追い詰める医療現場

なぜ病院経営はここまで悪化しているのでしょうか。福岡県糸島市の中核病院である「糸島医師会病院」の冨田昌良院長は「もう来るべきときが来たかなと。今後いろんな場所でそういうことが起こってくるのではと思っている」と話します。「我々もコロナ後から経営は不安定。一昨年その前と億単位の赤字を出しています」
特に深刻なのが、物価高騰による医療物資の値上がり。同病院では、注射針が昨年度の1箱230円から400円になりました。さらに昨年、10年ぶりに新調したMRIは、以前より2000万円以上高い1億7000万円の費用がかかりました。河合麻里看護師長は「大変だと思います、どこの病院も」と現場の苦しい内情を語ります。
■診療報酬3%アップも「焼け石に水ですよ」

こうした状況を受け、国は今年6月から診療報酬を約3%引き上げました。しかし、現場からは「(診療報酬)10%ほしいです」という本音が漏れます。人件費を上げなければ、スタッフが離職してしまうという切実な問題も抱えています。
医療ガバナンス研究所の上昌広理事長は、診療報酬引き上げに「もう全然“焼け石に水”ですよ。完全に公的医療はもう回りませんよね。現状に合わせて仕組みを変えないといけない」と、根本的な制度改革の必要性を訴えます。福岡のような都市圏は土地代や物価が高く、影響を受けやすい面もあるそうです。
■7割超が赤字…地域医療の未来をどう守るか

帝国データバンクによると、昨年の病院の倒産・休廃業・解散は全国で過去最多の889件。福岡県でも35件ありました。厚生労働省の調査では、一般病院の72.7%が赤字経営という厳しい実態が明らかになっています。
専門家は、今後の対策として「資金力のある民間IT企業などの病院運営参入」や「病院収入の投資運用などを可能にする」など、診療報酬だけに頼らない新たな仕組み作りの必要性を訴えています。
相次ぐ病院閉鎖は、単なる経営問題にとどまりません。地域住民の命と健康、そして街の未来そのものを左右する重大な課題となっています。







