博多祇園山笠「追い山笠」一番山笠総務の涙の理由 難病の妻へ届けた40年分の感謝と晴れ姿
福岡|
07/16 11:00

博多の夏を締めくくる「博多祇園山笠」が、クライマックスの「追い山笠」でフィナーレを迎えました。
今年の一番山笠を務めたのは「中洲流」。
その流の最高責任者である総務・立岩正則さん(75)にとって、この日は特別な意味を持つ一日でした。
仲間、そして愛する妻のために、全身全霊で駆け抜けた男の夏を追いました。
■「仕事より緊張します」40年背負う一番山笠・中洲流の総務

西日本最大の歓楽街、中洲。
立岩正則さんはこの地で42年間、寿司店を営んできました。
「嫁さんと2人でできるかなと思って中洲を選んだんですよね」と、開店当時を振り返ります。
周囲から反対もあったといいますが、今では街の顔の一人です。
その立岩さんが、中洲で歩んできたもう一つの道が「山笠」でした。
参加して40年。
今年、ついに流の最高責任者である「総務」の大役を任されました。
「仕事より緊張します。それだけ真剣かな」と、はにかみながらもその重責を語ります。
■「みんなのおかげですよ」仲間が語る総務・立岩さんの人柄
総務は、数百人の男たちを率い、すべての責任を背負う役職。
しかし立岩さんは「みんなのおかげですよ。みんなのおかげで総務をさせてもらっとるんですよ」と、常に仲間への感謝を口にします。
その人柄に、仲間たちも絶大な信頼を寄せます。
「僕たちはあのトップを男にするために一生懸命若手は頑張ってやるし」
「立岩さんをね、泣かせたいですよね」と語る仲間たち。
食事の席では自ら肉を焼いて振る舞うなど、偉ぶらないその姿勢が、流を一つにまとめていました。
■一番山笠総務の特権「博多祝い唄」妻に見せたい“晴れ姿”

一番山笠の総務には、特別な役割が与えられます。
櫛田入りで、たった一人で「博多祝い唄」を歌い上げるのです。
それは、山を舁く男なら誰もが憧れる晴れ舞台。
立岩さんには、その姿をどうしても見せたい人がいました。
「山笠のときはなんも言いません。よくできた嫁です」
そう語るのは、妻のまりさんについて。
小学校からの幼馴染で、中洲で店を出す時も文句一つ言わず、共に歩んできた人生の伴侶です。
■妻・まりさんへの想い…難病と闘う妻に届けたい“晴れ姿”

しかし、そのまりさんは数年前から難病を患い、今では外出もままならない状態です。
今年、立岩さんの山笠での姿を一度も見ることができていませんでした。
「もし見に行ってなんかあったら迷惑かけるから見に行かんかな、とか…」と、妻を気遣う立岩さん。
「本当は見に来たいんでしょうけどね。僕の晴れ姿を見てもらいたいけど…」と、寂しそうに言葉を続けました。
中洲のため、仲間、そして妻のため。
75歳の身体を気力で支え、15日間の祭りを駆け抜けてきました。
■「来たか…」追い山笠直前のサプライズと、涙の理由

そして迎えた追い山笠当日。
櫛田神社へ向かう直前、信じられない光景が広がります。
そこにいたのは、妻のまりさんでした。
「まり!」「来たか…」
驚きと安堵からか、立岩さんの目からは涙が溢れます。
駆け寄ってそっと手を取り、飾られた山笠を二人で見上げました。
最高のサプライズを受け、見事に大役を果たした立岩さん。
「いやあ、いい山笠でした。もうみんなのおかげです」と清々しい表情。
そして「嫁さんもう来んかなと思ったら来たからね」と、目を潤ませました。
最後は一緒に駆け抜けた中洲流の仲間たちを前に「皆様のおかげで無事奉納することができました。ありがとうございました」と、深々と頭を下げ、締めくくりました。







