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小学校そばにデータセンター計画 北九州市、不安の声も

福岡

09/18 17:00

データセンターの建設予定地

 生成AIの発達で、膨大なデータを処理・保存する施設「データセンター」の重要性が高まっている。北九州市では、小学校の近くに建設が計画されていることもあり、市民から排熱や騒音などへの不安の声が上がっている。

■児童1300人の学校横に九州最大級の規模

データセンター

 北九州市若松区の「ひびきの地区」は複数の大学が拠点を置き、閑静な住宅地も広がる。ここで進むデータセンターの建設計画に、住民から不安の声が寄せられている。
 ある男性は「うちの前にデータセンターが建つんですよね。不安で不安で、いろんな心配なことがあって」と話す。
 計画が進められているのは、約1300人の児童が通うひびきの小学校の真横。高さ約42メートルの巨大なデータセンターが2棟建設される計画で、九州最大級の規模になるという。

■「AIがものすごいスピードで需要を拡大」
 データセンターは、コンピュータやデータ通信のための装置を設置・運用する施設で、データの保存や処理を行うためのサーバーなどが置かれる。
 需要は急速に拡大しており、専門家は日本の競争力維持に不可欠なインフラと指摘する。日本データセンター協会副理事長を務める東京大の江崎浩教授は「今どきのZ世代以下の若い人たちはほとんど毎日AIとおしゃべりしながら生活している。AIがものすごいスピードでデータセンターの需要を拡大しているというのが現状」と語る。
 江崎教授によると、国内のデータセンターの多くは関東や関西に集中していて、南海トラフ地震などの被災リスクの観点からも九州や北海道といった地域にデータセンターを設置する意味は大きいという。

■住民に賛否 排熱や騒音などを懸念する声

住民からは不安の声も

 しかし、巨大なインフラ施設が学校の真横に建つことに、住民は強い懸念を抱いている。
 危惧しているのは、データセンターによる排熱や騒音。さらに、非常用として備えられる燃料タンクの安全性。住民に話を聞くと、さまざまな声が上がる。
 ある女性は「数値は法的にクリアしているから大丈夫と言われても、どの程度どういう影響があるのかを目の当たりにしていないので、不安が大きい」。別の男性も「学校の真横、住宅街のなか、そんなところに必要かっていうのは思う。データセンターはきっと必要なものだし、私たちも恩恵を受けているが、ここじゃないとだめっていうのは市から説明を受けていない」と疑問を呈する。一方、別の男性は「広い土地があるから活用されるのはいいのでは。電力と水をよく使うというけど、そこは心配しなくていいと思う」と賛成の立場を口にする。

■「敷地面積、災害リスクの低さなどから選定」
 元々この土地は北九州市が所有していたが、3年前に市議会の議決を経て民間に売却された。なぜこの場所が選ばれたのか。
 事業協力会社は取材に「北九州市からご紹介いただいた複数の候補地のうち、安定した電力供給、十分な敷地面積、災害リスクの低さなど、必須条件を満たす立地について、慎重に検討し、選定いたしました」「近隣環境については徹底した安全対策を講じており、説明会において具体的な内容をご説明しております」としている。
 北九州市もデータセンターの誘致を強力に推し進めている。
 武内和久市長は「水と電気と用地がある、そして人材がある。まさにデータセンターの立地条件で非常に最適な条件を備えている、これが北九州市」と語っていた。
 今年4月には2028年度までの3年間にデータセンター5件などを誘致する目標を発表し、最大6年度分の固定資産税を免除する優遇措置を打ち出した。今月には、福岡県直方市や鞍手町とともに国の「GX戦略地域」に指定され、県も誘致に力を入れる方針だ。
 福岡県の服部誠太郎知事は今月、「1ギガワットを超える電力供給を実現し、国内外からデータセンター事業者を確実に呼び込む」と話していた。

■市議会でも連日質問

北九州市の武内和久市長

 しかし、住民の不安は拭えず、北九州市の9月議会では連日、質問が相次いでいる。
 「児童の教育環境という観点からどのように認識しているのか」(市民とともに北九州・三宅まゆみ議員)
 「私は正直ここにデータセンターは建設できないと思った」(緑の風・井上真吾議員)
 「地域の安心と信頼なくして事業の円滑な進行はない」(北九州会・本田一郎議員)
  武内市長は「この問題を事業者まかせにせず、事業者との連携を十分にはかりながら、市として果たすべき役割を果たしていく」と語った。
 市は16日から相談窓口を設置し、説明会などを通じて情報発信や対話を進めたい、としている。
 東京大の江崎教授は「誠実な会話が一番。具体的な工事を行うときにはどういう風な配慮をして、特に児童への影響がないことをちゃんと提示していくというのが大事だと思う。住民のみなさんと業者の間でちゃんと合意ができるところにしっかり誘導するというリーダーシップが、誘致する自治体には常に要望される」と語る。

■「データセンター銀座」では訴訟の動きも
 多くのデータセンターが立地し、「データセンター銀座」とも呼ばれる千葉県印西市では、反対住民から訴訟の動きが起きている。
 論点となっているのは、法律上のデータセンターの扱い。現状、データセンターは立地の規制が比較的緩い「事務所」として扱われる。東京大の江崎教授は「コンピューターをたくさん収容して動かしていく事務所に近い形。工場や発電所に比べると非常に安全な設備」と話す。
 一方で原告の住民らは「非常用の発電機やデータ機器も置いてあるので、市の地区計画で建築が認められていない工場や倉庫にあたるのではないか」と訴えている。
 小学校のそばということもあって市民から不安の声が上がる北九州市。市は取材に対して「今回の場所は、小学校の隣だから選ばれた土地ではなく、豊富な電力や通信ケーブルなど、データセンターに求められる厳しい立地条件を満たす適地として事業者に選定されたもの」「子どもたちの安全や教育環境には通常以上の配慮が必要だと考えています。工事車両の安全対策はもちろん、騒音や日影などについても客観的なデータや専門的な知見に基づいて確認し、必要な対策を事業者に求めていきます。法令上の『安全』だけでなく子どもや保護者が実感できる『安心』まで確保していくことが市の役割だと考えています」としている。

9月18日(金)のニュース