“飲酒運転”多重事故の巻き添えで3歳の男の子死亡 両親が語る事故の瞬間「ソフトクリームを食べてただけ…」
福岡|
09/22 19:30

福岡市西区で20日、軽乗用車が大型バイク3台に追突し、追突されたバイクの1台が近くにいた家族連れに衝突しました。この事故で、3歳の大山晴瑠(おおやま・はる)ちゃんが病院に搬送されましたが、翌日、死亡しました。軽乗用車を運転していた男は、呼気から基準値を超えるアルコールが検出され、22日、危険運転致死傷の疑いで検察に身柄を送られました。
シルバーウィークの旅行の途中で起きた事故でした。
なぜ、3歳の晴瑠ちゃんが命を奪われなくてはならなかったのでしょうか。
■甘えん坊で誰にでも好かれる子だった

晴瑠ちゃんは保育園の年少クラスに通っていました。
父親
「晴瑠は本当にいつもニコニコしてるし。落ち着きがないと言えば落ち着きないけど、いつもうろうろして。なんとなく僕に似てるなというか、こういうとこパパ似かなとか、そんなことも思ったり」
母親
「最近は本当に甘えたがりで、『抱っこ、抱っこ』とか、『おんぶして』とか。本当に、誰にでも好かれるような子だったなって、私は思ってます」
「私が朝化粧するのをいつも見てるので、それ見て真似したり。『ママ見て見て』みたいな、『可愛い?』みたいな、言ってくれたりとか。保育園でも、やんちゃなところはあるけど『いつもニコニコしてますよ』って言って、可愛がってもらえてたなっていうのも、すごく思います」
アンパンマンが好きで、最近はキャラクターの絵が上手に描けるようになってきたところでした。
「晴瑠」という名前は、両親が“この子に会えた喜びだけを受けとってほしい”と願い、縁起が良いとされる「晴」と、宝物を表す「瑠」の2文字を使ったといいます。
その日常が一変したのは9月20日でした。
■事故までの経緯 家族旅行の途中で

晴瑠ちゃんと両親は20日と21日の2日間の予定で、大分市の自宅から佐賀へ旅行に出発しました。途中、道の駅のような場所があると気づき、海岸のエリアに立ち寄ることにしました。
母親
「海沿いでヤシの木のブランコとかいろいろあるから、『せっかくだから寄ろう』って言って寄って。一緒に遊んだり、写真撮ったり」
県道沿いの海辺に売店やブランコがある、人気の観光スポットです。晴瑠ちゃんと両親はブランコで遊んだり、海岸に出たりして過ごしました。
晴瑠ちゃんはアイスが大好きでした。ソフトクリームを見つけると、すぐ「食べたい」と言う子でした。
母親
「朝も出発が早かったので、少しでも何か食べれたらいいかなと思って、『ソフトクリームあるよ』って言って誘ったんですけど。喜んで食べてましたね」
店の外に置かれた屋外用ベンチに、父親と晴瑠ちゃんが並んで座りました。母親は晴瑠ちゃんの前に立ち、ソフトクリームで洋服が汚れないよう、首元にタオルをかけました。
写真には、父親からソフトクリームを食べさせてもらう晴瑠ちゃんが映っています。
母親
「『汚れないようにかけようね』って言ってかけて。ちゃんとかけれたなっていうところまでは記憶してるんですけど」
「本当に記憶が曖昧だけど、歩道で歩いてたんじゃなくて、ベンチで座ってソフトクリームを食べてただけで―」
事故が起きたのは、その瞬間—。両親2人は記憶が飛んでいるといいます。
父親
「気がついた時には倒れておりまして、両足もかなり痛みがあって、全身も痛みがあって。息子が見当たらず、車の進行方向後方の方を見たら、先ほど座っていたベンチの一部とバイクが重なってるところに人が集まっておりまして。そこに向かったところ、息子が倒れておりまして」
店の人や旅行中の人、休みの日だった看護師の女性たちが、救助と通報に当たってくれたといいます。
母親
「目が覚めたら、もう救急車が来ている状態で。旦那からはかろうじて『バイクが突っ込んできた』ってことだけ聞いたけど。でも晴瑠くんはもう、ストレッチャーみたいなのに運ばれて行こうとしていたタイミングで。うまく処理できないまま、大学病院の方に自分も一緒に運ばれていった」
晴瑠ちゃんは救急車で搬送され、途中からヘリコプターで福岡大学病院に運ばれました。頭を強く打ち、意識不明の重体でした。両親も同じ病院に運ばれました。
そして、翌日。午前8時12分、晴瑠ちゃんの死亡が確認されました。
■事故の原因は?軽乗用車の男「前日の晩から朝にかけて酒を飲んだ」

警察によりますと、20日午前11時9分ごろ、福岡市西区小田の県道で、軽乗用車が走行中の大型バイク3台に追突。このうち1台が晴瑠ちゃんと両親に衝突しました。バイクの運転手もけがをしています。
軽乗用車を運転していたのは福岡市西区の無職・大神正治(おおがみ・まさはる)容疑者(68)です。酒気帯び運転の基準値の6倍を超える、呼気1リットルあたり0.99ミリグラムのアルコールが検出され、危険運転致傷の疑いで現行犯逮捕されました。大神容疑者は容疑を認めていて、「お酒の影響でアクセルとブレーキを踏み間違えた」と供述しているということです。
晴瑠ちゃんの死亡が確認されたことを受け、警察は容疑を危険運転致死傷に切り替え、22日午前、大神容疑者の身柄を福岡地検に送りました。
現場から300mほど手前の防犯カメラには、数台のバイクが通り過ぎたあと、それよりも早い速度で通りすぎる大神容疑者のものとみられる黒い車も映っています。
捜査関係者によりますと、大神容疑者は、事故前日の晩から当日の朝にかけて自宅で少なくともワインや焼酎を飲んだという趣旨の供述をしています。さらに、朝起きてグラスに残った焼酎を飲んだことが引き金となり、再び飲み始めたという趣旨の話もしているということです。
■“飲酒運転”と聞いて…父親「人がやったことなのか」

父親が詳しい状況を知ったのは、事故翌日の朝でした。入院先の病院に警察が訪ねてきました。
父親
「例えば道路に何かあってスリップしてバイクがとか、何らか病気でとか。ひょっとしたら、私たちが座ってたところが車道に近すぎてとか。そういったことをぐるぐる考えておったんですが。警察の方から、そこで初めて『飲酒運転の車がバイクの方に追突して』というところを知りまして。お聞きした時には、さすがにショックで。何も言えず」
「正直、この日程に旅行に行かなければ、佐賀に行かなければ、あそこに寄らなければ、出発の時刻が少し遅れてれば。いろんな『ああしてれば』みたいなのがぐるぐるぐるぐるあって。でも起きたことっていうのは変えられなく、なんとか息子との別れも受け止めなければなというところで、飲酒運転の話を聞いてしまいまして―」
「ちょっと受け入れられない気持ちです。人がやったことなのかと。誰かが普通にしてれば、決まりを守っていれば、ちゃんとしていれば。全ての偶然の先で、そこだけなければ何も起きなかった」
■容疑者に対して「一生涯許すことできかねる」
事故から2日。大神容疑者について、父親は言葉を続けました。
父親
「驚きとショックと怒りと悲しみと。うまく言葉で言い表せないんですが。正直、もう許せない。法の下で刑罰を下された後は、社会的には許されるということになっていくかと思うんですが、私個人的な感情としては、一生涯許すことできかねます」
「もし私どもに直接謝罪などをされようというお気持ちがあるのでしたら、決してしてほしくはございません。“人殺し”が許されようと思うな、という気持ちがございます」
「一生抱えていただきたいと。もしかしたら刑務所等に入って、退所されてまた生活されることあるのかもしれませんが、生きていれば、いいこと、楽しいこと、嬉しいこと、いろんな小さい瞬間があるかと思います。そういった瞬間ごとに、私のことを思い出していただきたい。私は決して許しておりません。晴瑠くんはきっと覚えておりませんので、晴瑠くんのことは思い出さないでいただきたいです」
一方、追突されて晴瑠ちゃんに衝突したバイクの運転手について、父親はこう語りました。
父親
「『気にしないでください』というのは、おそらくもう無理なのでしょうが、どうか元気になっていただきたい。強く気にやまれているのであれば、私の方からの願いですので、どうか立ち直っていただきたい」
■母親「何に感情を向けていいのかわからない」
母親は、自分たちの診察が落ち着いてからニュースを調べ、軽乗用車の運転手から基準値を超えるアルコールが検出されていたことを知りました。晴瑠ちゃんの心臓は、まだ動いていました。
母親
「もう『わけがわからない』っていう一言でしかなかったかなと。なんでこんな時間に酒気帯びで運転してるんだろうとか。でも、まだ晴瑠くんの心拍が動いてるタイミングだったので、病院で。怒りとかそういうことよりも、今の状況を理解することというか。本当に、何に感情を向けていいのかがわからないっていう感じでした」
「言葉を選ばなければ、ひどく後悔してほしいし、絶対に許せることではない。頭ではそう思ってるんですけど、感情としてそこまでまだ出てこなくて。多分、今は最後、晴瑠くんをちゃんと見送るところに気持ちが行ってるんだと思うんですけど。できる限り厳しく裁かれてほしいと思ってます」
両親は、通夜と葬儀の準備をしています。今、望むことは―。
母親
「一番は、一緒にやっと帰ってこれた晴瑠くんを、最後、送り出してあげること。まずはそこが最優先かなと思ってます。」
父親
「まずはちゃんとお見送りをしてあげて、迷わないようにしてあげたいなと。晴瑠も、私と妻がこのままけがしてたり、元気がなかったら、心配して悲しむだろうなと思ってしまいますので。甘えん坊の子でしたので。私たち2人元気になって、夫婦と見守ってくれてる晴瑠くんと幸せな生活をまた取り戻そうかと。そこを今、一番望んでおります」







