去年“ほぼ廃棄”2年目のメロン 亡き父に誓った再挑戦 福岡・広川町
福岡|
10/04 18:00

去年、マスクメロン作りに初めて挑戦したものの出荷ができずに終わった農家夫婦がいます。夫婦は今年、亡き父への想いを胸に、2年目のメロン作りに挑みました。福岡県広川町での2人の挑戦を追いました。
■「あんたやりなよ」妻の猛アタックでアパレルマンが転身

福岡県広川町で農業を営むのは池岡修治さん(42)と妻・聖子さん(41)です。メロン作りは今年で2年目、就農して7年目の若手農家です。
以前、修治さんはアパレル関係、聖子さんは美容関係の仕事をし、東京で家族5人で暮らしていました。農業を始めたきっかけは、イチゴが大好きな聖子さんの一途な想いでした。
新聞で「(イチゴの)あまおう農家が衰退している」という記事を目にした聖子さん。「あまおう食べれなくなっちゃう⁉」と思い、修治さんに「あんたやりなよ」と猛アタックを開始しました。
最初は「はあ」と反応が鈍かった修治さんですが、「2年ぐらい言い続けたら、乗り気になってきて」(聖子さん)。修治さんも「いっちょやってみようかな」となり、家族で東京から福岡県広川町へ移住、イチゴ農家としての新たな生活をスタートさせたのです。
■「頑張れよ」父の最後の言葉を胸に

イチゴ栽培が軌道に乗った去年、夫妻は新たな挑戦を始めます。それが、マスクメロン作りでした。
聖子さんの父・美智人さんが闘病中、「メロンが食べたい」と口にしていることを知り、「メロンを作って父に食べさせよう」と思ったのがきっかけです。
しかし、苗を植えた去年5月、美智人さんは帰らぬ人に。「頑張れよ」とたびたび娘に声をかけていた父。闘病中、声が出なくなって最後に書いた文字も「頑張れよ」でした。
ほぼ独学で始めたメロン作り、初盆でお供えしたメロンは2人にとって決して満足いく仕上がりではありませんでした。
「自分の管理の仕方で水を切りすぎた」と修治さんが振り返るように、糖度を上げるための水管理に失敗。出荷基準の糖度に届かず、ほとんどを廃棄することになってしまったのです。
当時、「ひとえに勉強不足、知識不足」と悔しさをにじませた修治さん。「もっと早い段階でいろんな人に教えを請いに行かなければいけなかった」
■失敗から学び、挑んだ2年目

「今年は失敗できない」。決意を新たにした夫妻は、メロン専門農家の山岡翔平さんに教えを請い、栽培方法を一から見直しました。
決意の2年目。
「細かい一つ一つの作業から全然違って。真似できるところはとにかく真似して」と修治さん。去年は夏の暑さでメロンを吊るす紐が切れて落下する失敗もありましたが、今年は丈夫な紐に変えるなど、一つ一つの課題を着実にクリアしていきました。
去年失敗した水やりにも注意を払いました。メロンの糖度を上げるため、収穫前は水を与えません。去年は思わぬ猛暑でタイミングを読み違え、想像以上に葉が枯れてしまいました。
■「え、マジで⁉」「最高です」糖度13度達成

今年7月、いよいよ出荷前の糖度チェックを迎えました。去年とは違い鮮やかな緑が残る葉、メロンの網目もしっかりついています。それでも修治さんの口からは「本当に糖度が上がるのかな。期待はしない方がいい」と不安もこぼれます。
師匠の山岡さんが見守るなか、測定器がメロンにあてられました。
目標は糖度13度。
「13度。低い所は低いけど、問題ないです」。師匠の一言に、夫妻の表情が一変しました。「えーうそー⁉」「ちょっと忙しくなりません、これ」と驚きと喜びが入り混じります。「マジで泣きそうなんだけどわたし。ほんとに? 嬉しすぎる」と聖子さん。修治さんも「最高です。頑張ってよかったなって思いました」と満面の笑みを見せました。
示した数値は「13.5」。網目もきれいな立派なメロンです。
■町の名物へ、夫婦の挑戦は続く
2人には今年、もう一つのチャレンジがありました。広川町でメロンを作っていることをアピールすることです。
聖子さんは自ら観光協会に「イベントやらせてください」と相談し、「夏のフルーツ祭」を企画・開催したのです。会場では、夫妻が育てたメロンが販売され、多くの来場者でにぎわいました。
試食した人からは「広川で作っているの?」「食べた瞬間に果汁が口のなか全体に広がって、とてもおいしかった」と声が上がります。
聖子さんは「『おいしい』と言ってくれて、作ってよかったなと思いました。ほっとしました」と安堵の表情。
来場した広川町の氷室健太郎町長も「めっちゃ甘いですね」と満足げでした。
師匠の山岡さんも「ばっちりですね、もうメロン農家です」と太鼓判を押し、「2年目でこの味を出されたら自分はショックですね。7年やっているのに2年で越されるかっていう」と、その出来栄えに舌を巻いていました。
聖子さんは「1年目は父のためにと思って作って、2年目は町の特産品になればいいなと思って。そういうのを目指して頑張っていけたら」と今後の夢を語ります。
失敗を乗り越え、広川町で実を結んだ2人のメロン。夫婦の挑戦はこれからも続きます。







