【米ロ首脳会談は対面3時間】停戦向け協議“進展に言及なし”ゼレンスキー氏訪米へ
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08/17 23:10
米アラスカ州アンカレジで行われた歴史的な米ロ首脳会談をめぐり、米国内のメディアからは厳しい評価が相次いでいる。16日付の米経済紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」は、「トランプ氏はこうした華やかな行事の成果を何も残さずワシントンに戻った」と厳しく指摘し、就任前の選挙戦で「初日に戦争を終結させる」と公約したトランプ大統領が、「一時的な停戦すら確保できなかった」と外交的失点を強調した。トランプ政権に好意的とされている保守系メディアの論調も厳しさを増している。米「FOXニュース」の上級特派員は、「共同記者会見の部屋の雰囲気は良くなかった。物事が順調に進んでいるようにはみえなかった」との見方を示し、さらに、「プーチン大統領は強引に言いたいことを話し、そのまま立ち去ったようにみえた」と述べ、会談の実質的な不調を示唆した。 アンカレッジに位置する米軍の要衝「エルメンドルフ・リチャードソン統合基地」。ロシアの極東進出を抑止し、その軍事動向を監視する拠点として知られるこの基地が、歴史的な米ロ首脳会談の舞台となった。会談当日の8月15日、トランプ大統領は滑走路に敷かれたレッドカーペット上で、ロシアのプーチン大統領を出迎えた。基地上空では、米空軍が誇る爆撃機「B-2スピリット」と戦闘機「F-35」4機が編隊飛行を展開し、歓迎の意を示すとともに、米空軍の存在感と会談の重要性を際立たせた。また、トランプ大統領は会場に到着したプーチン大統領を自らエスコートし、両首脳は「アラスカ2025」と記された台座に上って並び立ち、カメラのフラッシュを浴びた。さらに、大統領専用車「ビースト」には、プーチン大統領が同乗するという破格の待遇が用意された。 会談後の記者会見で、プーチン大統領は8分30秒にわたり発言し、「ウクライナの危機を終わらせたい。ただし、それは長期的課題であり、危機の根本を取り除く必要がある」と述べ、従来の主張を崩さなかった。一方のトランプ大統領は3分11秒の発言にとどまり、「非常に生産的な会談だった。多くの点で意見が一致した。残された課題はわずかで、合意に至る可能性は非常に高い」と自信を示した。予定では、トランプ大統領とプーチン大統領が通訳のみを伴い直接向き合い、その後に米側5人、ロシア側5人による拡大会合、ワーキングランチ、そして共同記者会見へと進む段取りであった。実際には、米側・ロシア側ともに3人ずつが向き合う形に修正された。米側からはルビオ国務長官、ウィトコフ特使が同席。ロシア側はラブロフ外相、ウシャコフ大統領補佐官が加わった。会談冒頭、トランプ大統領は記者の問いかけに一切応じなかったが、プーチン大統領には、記者団から「これ以上、民間人を殺さないと約束できますか」と問われ、プーチン氏は明確な回答を避けた。 米ロ首脳会談を終えたトランプ氏は、帰途の大統領専用機内でウクライナのゼレンスキー大統領と長時間にわたる電話会談を行った。ゼレンスキー大統領は8月16日に、自身のSNSを通じて、「私たちはトランプ大統領の3者会談の提案を支持します」と表明。そのうえで「殺戮の終結、戦争の終結に関する詳細については、月曜日(8月18日)にワシントンでトランプ大統領と話し合う予定。招待に感謝する」と投稿し、正式な対話に臨む姿勢を示した。 トランプ大統領は8月13日、3者会談の開催に言及し、「1回目がうまくいけばすぐに2回目を開く。プーチン大統領とゼレンスキー大統領と私の3人で会談するつもりだ」と述べ、和平協議の舞台を米ロからウクライナを交えた3者会談へ広げる意向を明らかにしていた。トランプ大統領は15日、共同会見では直接触れなかったものの、米FOXニュースのインタビューで「近く設定されるだろう」と語り、3者会談実現に前向きな姿勢を強調した。和平合意についても、トランプ大統領は「合意にかなり近づいている」と述べ、「ウクライナはそれに同意しなければならない」と発言。領土交換に関しては、「協議されていくが、最終的な決定権はウクライナに与えなければならない」との立場を示した。 一方、プーチン大統領は、交渉を通じ、制裁回避を狙いとしているとの見方が強い。米戦争研究所は8月14日、「プーチン大統領はアラスカでの会談に、制裁解除を必ず盛り込むよう繰り返し要請してきた」と報告。トランプ政権が7月29日に定めたロシア制裁の発動期限は8月8日であり、期限を越えた今も交渉材料として残されている可能性があるとみられる。トランプ大統領は13日、プーチン氏が停戦に応じなければ、「言うまでもなく、非常に深刻な結果がもたらされる」と警告。ベッセント財務長官も「状況がうまく進まなければ、制裁や二次関税が引き上げられる可能性がある」と発言しており、制裁強化をちらつかせていた。 ★ゲスト:兵頭慎治(防衛省防衛研究所・研究幹事)、小谷哲男(明海大学教授) ★アンカー:末延吉正(ジャーナリスト/元テレビ朝日政治部長)