【激務外交から国会審議】高市補正で本格論戦“積極財政”基礎的収支の黒字化達成は
政治|
11/09 22:49
高市早苗総理は就任直後から日米・日韓・日中の首脳会談を立て続けにこなし、休む間もなく臨時国会に臨んだ。10月28日に日米首脳会談。30日に日韓、31日に日中と続いた歴訪を終え、高市早苗総理は11月1日、外交ラッシュを経て帰国の途に就いた。2日は「GREEN×EXPO2027」日本政府出展起工式、3日には「全拉致被害者の即時一括帰国を求める国民大集会」に出席。4日以降は衆参両院で代表質問、7日には衆院予算委員会に臨んだ。就任直後から、事実上の「休暇ゼロ」のまま論戦の只中へと突入した。首相公邸への転居もままならず、「荷造りの暇がないどころか、睡眠時間もほとんど取れていない状況で仕事をしている。どうかそこはご理解を」と現状を説明した。11月6日午前3時4分に、首相公邸では、高市総理による予算委員会に向けた勉強会が始まり、3時間21分に及んだ。午前8時からは経済安全保障推進会議、続けて閣議。9時からは午後5時過ぎまで、衆院予算委員会の答弁に立ち続けた。衆院予算委で「早すぎる出勤で、多くの方に影響を与えたのでは」との質問に、高市氏は「宿舎のFAXは10枚ほどで紙が詰まるタイプで、昨日の段階では答弁書を受け取る術がありませんでした。秘書官、SP(警護官)さん、ドライバーの方にご迷惑をおかけしました」と語った。10月4日の自民党総裁選出直後、高市氏は「嬉しいというよりも、これからが本当に大変。全世代総力結集で全員参加で頑張らなきゃ立て直せません。私自身、ワーク・ライフ・バランスという言葉を捨てます。働いて、働いて、働いて、働いて、働いてまいります」と語っていた。 高市内閣が編成を進める2025年度補正予算は、物価高騰対策や防衛費GDP比2%達成への積み増し、医療・介護支援、地方交付金の拡充など分野は多岐にわたる。自民の小林鷹之政調会長は11月6日、「今置かれている状況を考えれば、相応の額になってくる。何かキャップをはめてやるものでもない。しっかり積み上げることが重要」と述べ、規模拡大に理解を求めた。自民・日本維新の会の両党は衆院で過半数に2議席、参院で6議席足りず、補正予算成立には野党の協力が不可欠。一方、与野党6党は11月5日、ガソリン暫定税率(1リットル当たり25.1円)を12月末で廃止することで合意。約1.5兆円の財源が失われる見通し。かつて自公政権は、代替財源の提示がないままの暫定税率廃止の審議には応じない姿勢を貫いてきた。 立憲民主の吉田はるみ代表代行は11月5日の衆院本会議で、「物価高対策としておこめ券の配布を補正予算に盛り込むのか」と質した。これに対し、高市総理は「地域の実情に応じた的確な支援をお届けできるよう、重点支援地方交付金の拡充などを検討するよう指示した」と述べ、具体策の明言は避けたものの、検討を進めていることを示唆した。この問題を巡り、鈴木憲和農水大臣は10月31日に、「経済対策の中で重点支援交付金を検討中。お米券を配ることで負担を和らげ、『もっと買える』という状況を作ることが当面できることだ」と説明した。国民民主の玉木雄一郎代表は、電気・ガス料金の支援水準について質問。高市氏は「寒さの厳しい冬の間、支援を行う」と述べたうえで、年収の壁引き上げに関しても「3党合意を踏まえ、年末までに令和8年度税制改正プロセスの中で基礎控除の物価連動による引き上げる税制措置を具体化する」と答弁した。 高市政権は、これまでの「単年度ごとのプライマリーバランス(PB)」黒字化目標を見直し、複数年単位で財政健全化を点検する方針を示した。高市氏は「単年ごとのPBという考え方は取り下げると考えていただいて結構」と明言。2025~2026年度を通じ、国・地方を合わせたPB黒字化を「可能な限り早期に」達成する方針を掲げた。積極財政を掲げるのは高市総理、片山さつき財務大臣、城内実経済財政担当大臣。財政規律を重視する麻生太郎副総裁や鈴木俊一幹事長らの間には温度差もある。一方、立憲民主の本庄知史議員は11月7日の衆院予算委で、「高市総理は5月に『国の品格として食料品の消費税は0%にすべき』と述べたが、就任後の答弁は後退している」と追及した。これに対し、高市氏は「自民党と維新の合意文書にも検討項目として含まれており、選択肢として排除するものではない」と応じた。ただ、高市氏は11月4日の衆院本会議では、「レジシステム改修などの課題にも留意が必要」と述べた。 ★ゲスト:林尚行(朝日新聞コンテンツ政策担当補佐役)、佐藤千矢子(毎日新聞専門編集委員) ★アンカー: 杉田弘毅(ジャーナリスト/元共同通信論説委員長)





