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注射器でアルコール注入か…自分に6億円の保険金をかけ“替え玉殺人”懲役30年の判決

社会

07/02 23:30

広島県のホテルで知人の大学生にアルコールなどを摂取させ、殺害した罪に問われた男の裁判が開かれました。男は自分に6億円以上の保険金をかけていて、その保険金を受け取るために男性を自分に見せかけて殺害。あたかも自分が死んだふうに偽装した“替え玉保険金殺人”だと検察は主張しています。注目の判決は…。 ■ホテルの密室
 自らの死を偽装か “保険金替え玉殺人事件”は広島県廿日市市で起きました。登場人物は主に3人です。被害者の安藤魁人さん、男子大学生で当時21歳。南波大祐被告、現在33歳。そして南波被告の「弟」です。 事件が起きたのは2021年11月。深夜0時を越えた頃、ホテルから119番通報がされました。 119番通報 「窓を開けていたらムカデが入ってきて、1人が大変なことになっています」 公判での検察の主張によると、救急隊員が駆け付けると、心肺停止状態の男性と通報した男の2人が部屋にいました。隊員や医師に対して男は「南波大祐がムカデにかまれた。自分はその弟だ」と話しました。この時「南波大祐」の健康保険証と弟の保険証を見せたといいます。 搬送後、病院が「南波大祐」の実家に連絡を入れます。事態が急変したのはここからでした。死亡した男性は「南波大祐」ではなかったのです。のちの母親の証言です。 南波大祐被告の母親の証言 「ぱっと見で被害者が大祐じゃないことに気が付いた」 ムカデに噛まれたとされ亡くなっていたのは「南波大祐」ではなく、愛知県の大学生・安藤さん。そして119番通報した「南波大祐の弟」と名乗っていた男は南波被告、本人でした。自分で自分を死んだように見せかけた替え玉殺人だったのです。 ■自分にかけた6億円超の保険金 この時、南波被告には最大で6億3000万円の保険金がかけられていました。 検察 「被告は弟を受取人として自身に多額の保険金をかけ、被害者を替え玉として殺害し、弟になりすまして保険金を受け取ろうとした」 安藤さんが大量摂取させられていたのは睡眠導入剤とアルコールです。安藤さんは酒を飲まないため、眠らされている間に、注射器で体内に96度のウォッカが注入されたとみられています。 死因は、窒息による低酸素脳症でムカデとは無関係でした。ムカデによって亡くなると特約で保険金が5億5000万円から6億3000万円に増えることから偽装を試みたとされています。 この犯行の20日前には、ムカデではなくスズメバチを利用した偽装が試みられていますが、それは失敗に終わっています。 ■判決で「計画のずさんさ」指摘 南波被告と安藤さんは宗教の勧誘を通じて知り合いました。その直後から南波被告がパソコンで検索していたキーワードです。 「別人」「生命保険」「検死」「睡眠薬」「替え玉殺人事件」「バレない」「スズメバチ」「死亡」「保険金」「アルコール」「致死量」 南波被告がお金に困っていたという情報はありません。公判などでも動機が明らかになることはありませんでした。 2日の広島地方裁判所。 裁判長 「本件は、その殺意の強さ等に照らして無期懲役刑の選択が全く視野に入らない事案ではない。しかし、保険金を受領できる現実的可能性が低いという計画のずさんさを含めた犯行全体を見ると、無期懲役刑を選択するには至らない」 言い渡された判決は、求刑通りの懲役30年というものでした。

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