専門家警鐘“大気の川”同時発生で大災害に?勢力強い「秋台風」今年は増える可能性
社会|
09/20 22:30
20日は全国的に大気の状態が不安定で、北海道では線状降水帯が発生する恐れがあります。そしてこれからの季節、心配なのが「秋台風」。専門家が警戒するのは、大災害をもたらす可能性がある“大気の川”です。(9月20日OA「サタデーステーション」)
■北海道に線状降水帯発生か
報告・松田和秀ディレクター
「午後8時半すぎです。雨が激しく道路に打ち付けています」
北海道苫小牧市では、時間の経過とともに雨が強くなっています。気象庁は21日明け方にかけて北海道で線状降水帯が発生する恐れがあるとして警戒を呼び掛けています。すでに「大雨災害」に対する備えも始まっています。
報告・松田和秀ディレクター
「東室蘭駅ですが一部電車で運休が生じているということで、駅構内には路頭に迷う人たちも出てきています」
■46都道府県に雷注意報
全国で荒れた天気に
北海道だけでなく20日は全国の広い範囲で荒れた天気となりました。石川県穴水町では、まさに“どしゃ降り”。風も強く、路面に打ち付けた雨が巻き上げられている様子も確認できます。さらに雷鳴が住宅街に響き渡ります。20日は全国的に大気の状態が不安定で、群馬県以外のすべての都道府県に雷注意報が発表されていました。
■勢力強い「秋台風」今年は増える可能性も
そして、これから警戒が必要になるのが「秋台風」です。「夏台風」と比べても勢力が強く、日本列島に上陸しやすい傾向があるため、甚大な被害をもたらす可能性があります。18日には、わずか1日で台風が3つも発生するという、極めて稀な現象も起きています。この中の1つ、台風19号を上空から観測するため、21日に飛行機に乗りこむ予定の名古屋大学・坪木教授。
名古屋大学
坪木和久教授
「特に今年は残暑が長引いているような状況なので、10月いっぱいぐらいまでは台風の上陸に対して十分な注意が必要」
秋になると、日本列島を覆っていた高気圧が太平洋上に移動し、台風が上陸しやすくなります。ただし、今年は特に、海面水温が平年より2℃前後高い“異常な状態”が続いているため、台風が大量の水蒸気をエネルギー源に、強大化しやすい状況だといいます。
■専門家警鐘
大災害もたらす“大気の川”とは
「秋台風」の最たる例が未曾有の被害を出した、「令和元年東日本台風」です。
6年前の10月に発生した台風19号によって、長野県では千曲川の堤防が決壊。近くの北陸新幹線の車両基地では120車両が浸水し、すべて廃車になりました。全国142カ所の堤防が決壊し、3万棟近い浸水被害が出ました。伊豆半島に上陸し、関東を通過したため、気象庁の観測所100地点以上で24時間雨量の史上1位を更新。神奈川県箱根町では1日で922.5ミリ、つまり1メートル近い量の雨が降り、これは現在も日本の観測史上1位の記録です。
首都圏では、多摩川が氾濫。水位が高くなった多摩川に流れ込むことができなくなった雨水がマンホールなどからあふれる、「内水氾濫」が原因と考えられています。JR武蔵小杉駅の周辺では広範囲で浸水が発生し、タワーマンションの一部で1週間以上、電気や水道が途絶えました。
全国で死者91人、行方不明者3人。甚大な被害を出した東日本台風。坪木教授がその要因の1つとして考えているのが、台風と同時に発生していた「大気の川」です。
名古屋大学
坪木和久教授
「大量の水蒸気が帯状に細長く流れている構造のことを「大気の川」という。必ずしも台風に「大気の川」が伴っているわけではないが、台風に伴って発生すると、大雨災害がもたらされることがしばしばある」
地球規模で「大気の川」を見てみると、赤道付近から細長い大量の水蒸気の流れが何本も出ています。坪木教授による分析では、「東日本台風」の時には、太平洋上空に南北およそ2000キロ、幅およそ500キロという、巨大な「大気の川」ができていました。その水蒸気の量は、アマゾン川を1秒間に流れる水の2倍から3倍に相当していたといいます。坪木教授はつい最近も「大気の川」が甚大な被害を引き起こしたとみています。およそ2週間前、国内最大規模の竜巻が発生した、静岡県牧之原市。台風自体の勢力は弱かったものの、「大気の川」も形成されたことで、大きな被害に繋がったといいます。
名古屋大学
坪木和久教授
「この時、台風の東側に大量の水蒸気が流れ込む『大気の川』が形成されていて、それによって持ち込まれた大量の水蒸気が非常に強い積乱雲を発生させた。たくさんの積乱雲が発生したことによって、竜巻もたくさん発生したと考えることができる」
■異常な夏から異常な秋へ
一方、今後の台風を心配していたのは、都内で行われているイベント。
小田急電鉄
エリア事業創造部
岸田拓朗さん
(東京・世田谷区
午後6時すぎ)
「台風になるとなかなかお出かけが難しくなってくるかなと思いますので…」
下北沢で人が集まっていたのは、直径7メートルの月のアート。中秋の名月に向けて、19日から展示されています。
来場者の女の子たち
(東京・世田谷区
午後6時すぎ)
「いい!とってもいい!」
2日連続最高気温が30℃を下回り、秋の気配を感じるようになった東京。
報告・仁科健吾アナウンサー
(東京・世田谷区
午後6時半ごろ)
「日が沈んだあたりからから非常に過ごしやすいような天気になってきました。周りを見ても長袖を着ている方も多くいらっしゃいますね」
来場者の男性たち
(東京・世田谷区
午後6時半ごろ)
「きょうから急に涼しくなったので、急に長袖解禁しました」
■暑さの影響
北海道の紅葉は1週間遅れ
北海道でも、秋の訪れを感じられるところがありました。紅葉シーズンを迎えた大雪山系旭岳へと向かうロープウェイは、多くの観光客でにぎわっていました。20日は青空が広がっていましたが、ふもとでは今朝2.8℃と今季最低気温を観測しました。地元北海道から訪れた人は。
道内からの観光客
(北海道・東川町旭岳
午前9時半ごろ)
「(Q景色どうですか)きれい、寒い、ちょっとだけ寒い」
ただ、今年はこれまでの気温が高いため、例年なら9月中旬の今頃が見頃ですが色づきが1週間ほど遅れているといいます。
■秋の味覚にも異変
秋の気配一転、再び夏日も
異例の暑さは、秋の味覚にも影響を及ぼしています。
報告・手塚慶二朗ディレクター
(埼玉・加須市
正午過ぎ)
「大行列ができています」
お目当ては、さつまいも掘りです。例年週末の多い時で1日1000人程が参加するという大人気のイベントですが、今年は開催自体が危ぶまれたといいます。
むさしの村
遊園地事業部
町井愛主任
(埼玉・加須市
午後1時すぎ)
「今年は夏の“猛暑”と“雨が少なかった”関係で、試し掘りをした際に例を見ないくらい不作と言いますか、生育状況が悪いような状況でした」
さつまいもの成長にも暑さの影響を受ける中で、お客様に楽しんでもらおうと20日始まったのが「さつまいも不作でごめんね割」です。掘ってもさつまいもが出ない可能性があることを事前に告知し、参加料を値下げ。平日の開催もやめ、土日祝日のみとしました。
むさしの村
遊園地事業部
町井愛主任
(埼玉・加須市
午後1時すぎ)
「きょうは掘っていただいたところで(思ったよりは)多く芋が出たかなというところ」
21日は、再び強い日差しが復活し、各地で真夏日が続出する予想です。