齢50年超。透明スープで表現する見事な“豚骨っぷり” 福岡宮若市「来々軒」 ふるさとWish 宮若市  ~年間300杯! 豚骨戦士 福岡のラーメンを斬る!VOL.8~

豚骨の炊き方でラーメンの印象は大きく変わる

宮若市「来々軒」のラーメン(¥530)

澄んだスープの豚骨ラーメン。しっかりと乳化させた“白濁豚骨”に対し、“清湯(ちんたん)豚骨”“淡麗豚骨”と呼ばれるジャンルである。同連載VOL.4で紹介した飯塚市「来々」や北九州市「南京ラーメン黒門」がその代表格であり、福岡市内では昨年9月中洲にオープンした「月や」の淡麗豚そばが話題に。

今回紹介する宮若市「来々軒」も澄んだ豚骨ラーメンで勝負する名店。
しかも、創業から半世紀を超え、今なお地元民に深く根付いている。
福岡における清湯豚骨の先駆けといって間違いない。

老舗感ビシバシ!いかにも旨そうなラーメンを出していそうな佇まい

トタンの屋根に、色あせた看板。佇まいも風格のある「来々軒」は1963(昭和38)年、宮若市に店を構えた。ガラガラと引き戸を空けると、店内も昭和のノスタルジー空間。レトロ店の象徴である重厚な羽釜から湯気が立ち上り、古びた木札のメニュー表。ガラスケースの中には、セルフで取るおにぎりとゆで卵が置いてある。

「いらっしゃいませ」。厨房の釜の前で、湯がく前の麺を丁寧にほぐしながら迎えてくれた大将。初めて訪れた人は、このイニシエ感たっぷりの店を切り盛りする大将が意外に若いと思うかもしれない。

3代目店主の山路重紀さん。木蓋の上で麺をほぐしてから釜に落とす。伝統のスタイルを守りながら“より旨い一杯”を日々研究

56年間歩みは1代ではなかなか行き着かない数字。現在、暖簾を守る山路重紀さん(昭和54年生まれ)は3代目。この一杯には、味の継承という人間ドラマが詰まっている。「来々軒」はかつてJR福間駅前にあった同名店が源流であり、宮若市に立ち上げた初代から隣人の石田さん夫婦が2002年に継承。
(閉店した直方「植木らーめん」も同系統にあたる)。
さらに、2代目夫婦の長女と結婚した山路さんが2012年に店を継いだ。

宮若市の老舗製麺所から仕入れる麺を大釜で泳がせる。「古い常連さんに、前より旨くなった、と言われた時が一番嬉しいですね」と山路さん

「先代のラーメンを最初に食べた時、あまりの旨さに衝撃を受けました。後継者がいない理由でこの味が消えてしまうのは寂しいと。当時私はシステムエンジニアをしていて料理は素人同然だったのですが、ラーメン道に進む事を決めました。見ながら覚えなさい、というのが先代のスタイルで、特にレシピもなかったので最初は苦労しましたね。もともと理系なので、まずは目分量の材料をすべて数値化することから始めました」と、振り返る山路さん。“透明感の残る豚骨スープ”。昔ながらの軸は決してぶらさずに研鑽を重ねた。

材料は豚のゲンコツのみで頭は使わない。弱火だけで炊き続けると透明感は残るが深みが出ない。強火も程よく織り交ぜる絶妙の火加減、徹底したアク取りで雑味、エグミのないピュアな豚骨スープを取る。
骨を砕かずにじっくり炊く。さらに何回も濾すことも、舌ざわりがよく、旨味が幾重にも広がるスープを作るのに肝要。

店内はカウンター、座敷席、個室など広々。夜はラーメン&ちょい飲み処としてにぎわう

そして、具材を食べてみても丁寧な仕事っぷりを感じられる。チャーシューは豚ロース肉。余分な脂をそぎ落とし、ある程度の噛みごたえ“肉感”を大事にしている。また、水煮タケノコを手切りするメンマのカリコリ食感、甘めの味付けも絶妙。旬の時期は地元産のタケノコになるそうだ。

“あっさり”のなかでも、旨味がグイグイと押し寄せてくるのが清湯豚骨の魅力。子供、年配の方も食べやすく、普段濃厚豚骨派には新鮮な一杯。
体にスッ~と染み渡る、滋味深いスープを体感してほしい。

【来々軒】
住所:福岡県宮若市福丸270-2
電話:0949-52-0168
営業時間:11:00~14:00、16:30~LO21:30
休み:水曜
席数:40席
駐車場:なし

※この記事は2019年の情報です。内容は変更している可能性があります。事前にご確認ください。

来々軒

住所:宮若市福丸270-2
電話番号:0949-52-0168
営業時間:11:00~14:00 16:30~LO21:30
定休日:定休日:水曜

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