福岡県春日市の路地裏に、2026年6月、突如として長い行列が出現しました。
そのお目当ては、テイクアウト専門のスイーツ店『New York Sakuraya(ニューヨーク サクラヤ)』。博多の夏菓子として定着した「博多水無月」の発案や看板商品「お茶々万十」で知られる老舗和菓子店「お茶々万十本舗 富貴(ふうき)」が手掛けた、新しいお店なんです。
「和菓子屋が、ニューヨークで、シュークリーム?って、パワーワードだらけですよね(笑)」とチャーミングに笑うのは、富貴の現代表・松本弘樹さん。
意外性あふれる新店の誕生。実はその背景には、四半世紀にわたる国境を越えた壮大なストーリーがありました。――が、その歴史を紐解く前に、まずは行列を生み出す大人気商品をご紹介しましょう!
■1日最高1,200個!溢れるクリームとサクサク生地
お店の看板商品である「濃厚マスカルポーネクリームシュークリーム」(300円)には、おいしさを引き出すための強いこだわりが詰まっています。
生地にはサクサクとした食感が心地よいクッキーシューを使用。注文が入ってからその場でクリームを充填することで、焼き立ての香ばしさと出来立てならではの食感を最大限に楽しめる仕掛けにしています。マスカルポーネチーズをブレンドしたクリームは濃厚なコクがありながらも重すぎず、絶妙な後味を引き立てる特製レシピに仕上げました。
この“逆輸入”シュークリームはオープン当初から注目され、最高で1日1200個を売り上げるほどの大盛況となっています。
■WEBサイトをきっかけにNYへ!波乱万丈のグローバル挑戦記
なぜ和菓子屋さんが、ニューヨーク仕込みのシュークリームを-?
その歴史の始まりは1999年に遡ります。弘樹さんが開設した「和菓子の作り方を教えるホームページ」に、ニューヨークで大福工場を営む企業から「製造指導をしてほしい」とSOSメールが届きました。
メールでの無料アドバイスをきっかけに、2000年には弘樹さん自ら渡米。現地工場の清掃から始まり、レシピ改善や技術指導を徹底的に行いました。その情熱に感銘を受けたのが、工場のオーナーでもあるアジア銀行頭取のAさんでした。
「まんじゅう屋と銀行じゃ、資本金のゼロの数が全然違うじゃないですか(笑)。でも頭取室に呼ばれて『一緒に商売をやらないか。これは天・地・心(ご縁とタイミング)だ』と言われたんです。その2〜3秒後には『やります!』って握手していましたね。もう腹をくくって『やっちゃえ!』という感じでした」(弘樹さん)
こうして共同事業がスタートし、大福などの製造卸を手掛ける「桜屋(SAKURAYA)」が誕生しました。
■アメリカでは“シュークリーム=和菓子”!?
その後、チャイナタウンの一角で当時流行の兆しを見せていたシュークリーム専門店をスタート。生地を焼き、目の前でクリームを絞るライブ感あふれる演出は、現地で「これぞ繊細な“和スイーツ”」と大ヒット!なんと90分待ちの行列ができる人気店となりました。
「目の前で皮を焼いてクリームを詰めるというライブ感を持ち込んだのは、日本のシュークリーム専門店でした。だから、向こうではそのスタイルのシュークリームは洋菓子ではなく『和スイーツ』のカテゴリーに入っちゃったんです。うちの店ではオリジナリティーを出すために、ニューヨークチーズケーキなどに使われるマスカルポーネチーズをブレンドした特製クリームを出したら、これが大ウケしました」
しかし、店の経営は決して順風満帆ではありませんでした。2001年のアメリカ同時多発テロ、北アメリカの大停電、リーマンショック、さらには厳しすぎる規制による営業停止処分など、数々の試練に見舞われます。
「大停電のときは、冷凍庫に入れていた大福が全部パーになりそうになって。『売れないなら駅前で配れ!』ってスタッフ全員で無料配布したんです。そうしたら後日『あの時もらった大福がおいしかった』ってスーパーに買いに来てくれてね。テロも停電もありましたけど、、、本当に人と運に恵まれました」
■25年の時を経て日本へ!息子・空海さんへのバトン
しかし2025年、長年ともに歩んできたAさんが他界。弘樹さんは「彼と育んだ事業と想いを、日本の地元にも持ち帰りたい」と、富貴本店のすぐ隣の物件が空いたタイミングで日本1号店の開店を決意しました。
『New York Sakuraya』の社長に就任したのは、松本さんの息子で3代目の松本空海さん(36歳)。学生時代ラグビーに打ち込み、卒業後商社で働いていた空海さんは、父という偉大なキャプテンから経営の「パス」を受け取り、新たなフィールドへ躍り出ました。
「開店当初は予想外の行列ができ、お客さまや近隣の方にご迷惑をおかけしてしまい申し訳なく思っていました。今はスタッフと改善に乗り出し、SNSで焼き時間をお知らせしたり、こまめに焼きたてを補充したりと、なるべく閉店まで売り切れないよう心がけています」(空海さん)。
■シュークリームだけじゃない!「グローバルスイーツ」のワクワク感
店内にはシュークリーム以外にも、手土産にぴったりな「濃厚なめらかプリン」(300円)や「ミニパイ」(10個600円)など、目移りしてしまうスイーツがずらりと並んでいます。
中でも目を引くのが、韓国の伝統的な餅菓子「カムジャ・パン」(250円)。ジャガイモ餡を包んだ甘さ控えめのお菓子で、日本人の口に合うよう、サイズ感や味を調整して提供しています。さらに、NY時代に現地の人気ドリンク店からノウハウを学んだ本格派のティードリンクに加え、富貴の「博多カステラ」に使用している糸島レモンを使った「糸島レモネード」(M350円)、北川半兵衛商店の高級抹茶を使用した「わらび餅入り抹茶オレ」(M600円)など、和菓子や洋菓子という枠組みにとらわれないラインナップが魅力です。
「世界中の『おいしい!』を集めたグローバルスイーツショップです。『春日のちっちゃな万十屋が、なんか面白いことやってるな!』と思ってもらえたら嬉しいですね」(弘樹さん)
『New York Sakuraya』のオープンにより、隣接する和菓子店「富貴」へ足を運ぶお客さんも急増。「伝統的な和菓子」と「NY生まれのグローバルスイーツ」がお互いを引き立て合っています。「こういうのを『相乗効果』って言うんだなと実感しています」(弘樹さん)
取材の最後、弘樹さんは笑顔でこう語ってくれました。
「やったことにしか、答えは出ないですからね。『やりたかった』『やっていれば良かった』では何も残らない。だから、まずは形にしてやってみることに意義があると思っています」
春日市の路地裏で紡がれる、ニューヨーク仕込みのサクサクシュークリームと新しいスイーツの挑戦。ぜひ一度、そのこだわりの味と熱いストーリーを確かめに、足を運んでみませんか?
■New York Sakuraya(ニューヨーク サクラヤ)
住所:福岡県春日市伯玄町2-55-4
営業時間:10:00~17:00
店休日:水・木曜
駐車場:富貴の駐車場を使用可(5台分)
HP: https://newyork-sakuraya.com/
https://www.instagram.com/newyorksakuraya/
■ New York Sakuraya
住所:福岡県春日市伯玄町2-55-4
New York Sakuraya ホームページ
New York Sakuraya インスタグラム
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