「神回ならぬ“米回”の目撃者になってほしい」ギャラクシー賞大賞に選ばれたラジオ番組をKBCが特別放送
福岡|
06/27 12:00
「超高級炊飯器ってさ、お米の味、違うのかなぁ…?」

全国の優れた番組に送られる「第62回ギャラクシー賞」で、KBCラジオが制作したトークバラエティ番組「MANDAN」が、ラジオ部門で大賞を受賞しました。
受賞回の再編集版が28日に放送されます。MANDANのプロデューサー・米嵜竜司さんに、受賞の喜びと番組の聴き所などを聞きました。
予定調和・セオリーを崩せば「絶対面白くなる」

内容は、ラジオパーソナリティが「10万円台の高級炊飯器が気になって仕方がない」とコメントしたことを受け、米嵜プロデューサーが生放送中に炊飯器を購入。炊き立てのご飯を食べてリスナーと感動を共有するという、ラジオならでは、生放送ならではの臨場感あふれるものでした。
——あらためて、大賞に選ばれた率直な感想を教えてください
米嵜:率直に言うと、「やっべえ」でしたね(笑)。喜びよりも先に、焦りの言葉が口をついて出ました。
というのも、大賞の受賞スピーチなんてまったく考えていなかったんです。
授賞式では、まず選奨(入賞)した8番組の関係者が舞台に上がります。そこから優秀賞が発表されるのですが、その時点で『MANDAN』の名前は呼ばれませんでした。
その瞬間にもう、「ああ、選奨か」と完全に諦めてました。客席にいたパーソナリティのきょんちゃんとハニーちゃんにも、僕ががっくり肩を落としているのが見えていたそうです。
だから、その後の大賞発表もどこか他人事で聞いていました。発表の形式が、いきなり番組名を言うのではなく、「今年はリスナーを巻き込んだイベントの企画が…」といった全体の講評から始まったので、「イベントじゃないし、うちじゃないだろうな」と。そう思っていたら、最後に「大賞は九州朝日放送『MANDANです』」と。
もう頭が真っ白。「よっしゃ!」というより、「やっべえ、挨拶どうしよう」と。本当にそれがすべてでしたね。
——審査員に評価された「臨場感」についてはいかがですか?
米嵜:選考理由の第一にその点を挙げていただき、本当にありがたいです。あの放送は、僕らにとっても一つの「ドキュメンタリー」でした。
ラジオ番組には、一種の“お決まり”があるんです。パーソナリティが「10万円の炊飯器、欲しいなあ」と盛り上がっても、結局は「買えたらいいね」「夢だよね」で話が終わる。リスナーも「まあ、買わないだろうな」と思って聞いている。買うと思いきや買わない、それが暗黙のセオリーなんです。
僕自身、ずっと前からその“お決まり”に少し違和感があって、「ここで本当にやったらどうなるんだろう?」と常々考えていました。だから、オープニングできょんちゃんのトークを聞いた瞬間、「今だ」と。このセオリーを崩せば、絶対に面白くなると直感したんです。
だからパーソナリティの二人には、僕が本当に10万円の炊飯器を買いに行くと一切伝えませんでした。「本当に買うの?」「どうなるの?」という二人の“素”の動揺や、僕が送るLINEの実況に一喜一憂する姿。それがそのままリスナーのドキドキ感につながり、スタジオとリスナーが一体になって同じ時間を共有できた。この「何が起こるかわからない」スリリングな感覚こそが、評価していただけた「臨場感」なんだろうなと。
生放送の魅力は、作り手と喋り手、リスナーがリアルタイムで影響し合って番組を作っていく双方向性にあります。今回はその化学反応が僕らの想像を超える形で起きた。まさにラジオならではの、生放送ならではの瞬間だったと思います。
——「10万円炊飯器」のご飯を食べたきょんちゃんのリアクションは最高でしたね
米嵜:ありがとうございます。僕も現場にいて思わずガッツポーズしました。
正直に言うと、「彼女なら、きっといいリアクションをしてくれるだろうな」という確信めいた期待はありました。きょんちゃんは、自分が興味を持ったものへののめり込み方が尋常じゃないんです。何より、きょんちゃんもハニーちゃんも、すごく素直で嘘がつけない性格。だからこそ、何の打ち合わせもないサプライズな状況で本物のご飯を出せば、絶対に面白くなると。
ただ、どんなふうに盛り上がるかは、やはりその場の「生もの」。きょんちゃんが噛みしめるようにご飯を食べた後に出た「おいしい…」の一言は僕の想像を完全に超えていました(笑)。
あのリアクションこそが、この企画のすべてを物語ってくれたと思います。彼女の純粋な感動がリスナーにも伝わった瞬間でしたね。リスナーからは「神回ならぬ“米回”ですね」と言われています(笑)。
オープニングトークを「たまたま聴いてた」から生まれた企画

——毎週放送に立ち合って、今回のような企画をいつも考えているんですか?
米嵜:いえ、とんでもない。いつも何かを仕掛けようと狙っているわけでは全くないんです。むしろ、ラジオの生放送で一番大事なのは「当たり前の放送を、当たり前に続けること」だと思っています。
毎日気合を入れすぎると、パーソナリティもリスナーも疲れてしまいます。何気ない日常の放送をコツコツ続けることで、リスナーはパーソナリティの人柄を知り、信頼関係ができていく。その長い長い「当たり前」の時間こそが、実は壮大な「フリ」になるんです。
その上で、実を言うと僕はこの番組の生放送に立ち会えているわけじゃないんです。体感ですが、立ち会えるのは2回に1回ぐらい。あの日も本当にたまたま、直前の番組(ハッピーアワー)の反省会が早く終わり、スタジオ横のソファでぼーっとオープニングトークを聴いていました。
普段の「フリ」があるからこそ、今回のような非日常的な「オチ」が来た時に、とてつもなく際立つ。今回の企画は、まさにその典型でした。あのタイミングで、あの場所に僕がいて、あのトークを聴いていなかったら生まれなかった“奇跡”ですが、それは同時に、普段の放送という土壌があったからこそ咲いた“必然”の花だったのかもしれませんね。
凝縮されたドキュメンタリー感を楽しんでほしい

——大賞受賞を記念して、この放送の再編集版が放送されます。あらためて、聴き所を教えてください。
米嵜:この編集版は、普段『MANDAN』を聴いていない方、僕らパーソナリティのことを全く知らない方が聴いても楽しめるように、ということを第一に考えて作りました。ギャラクシー賞に出したのも、この再編集版です。
聴き所は、まず「凝縮されたドキュメンタリー感」です。
元の4時間生放送から他のコーナーをすべて削ぎ落とし、「プロデューサーが炊飯器を買いに行って、みんなで食べるまで」という一つの物語に特化させました。
ジェットコースターのように展開していくはずです。
何より聴いてほしいのが、パーソナリティ二人の“素”のリアクション。
この企画は彼らにとって完全なサプライズだったので、その戸惑いや興奮、純粋な感動はすべて“本物”です。
ただ、究極的に言えば、僕が一番届けたいのは企画を通して伝わるパーソナリティ二人の人間的な魅力なんです。
僕にとってラジオの面白さの核心は「パーソナリティを好きになること」。
このハプニングに翻弄されながらも楽しそうにわちゃわちゃしているきょんちゃんとハニーちゃん、その人柄や関係性を好きになってもらえたら、作り手としてこれ以上うれしいことはありません。
難しいことを考えず、まずはこの“事件”の目撃者になるような気持ちで聴いてみてください。そしてもし、二人のことを少しでも面白いなと思っていただけたら、それがラジオの扉を開く最高のきっかけになるはずです。

KBCラジオ 6月28日(土)午後9時~
第62回ギャラクシー賞 ラジオ部門 大賞受賞作品「MANDAN」
https://kbc.co.jp/r-timetable/day.php?id=3