【中国AIディープシーク】低コストで高性能“米政権に焦燥”技術覇権と安全保障は?
国際|
02/02 22:29
中国東部の浙江省杭州市に本社を置く新興企業「ディープシーク(DeepSeek)」が最新の人工知能(AI)モデルを発表し、世界の株式市場と米政権を揺るがした。同社製品は、米国のトップモデルに性能面で引けを取らず、低コストで実現したとしている。AI半導体大手の米エヌビディアなどの株価急落に直結した。この衝撃を受けて、1月27日は、世界的にハイテク株が売られた。これにより、エヌビディアは、時価総額で一時18%下落し、5927億ドル(約92兆円)が消失した。トランプ米大統領は27日、「ディープシークによる生成AIの発表が、競争に勝つためにさらに集中すべきだという米国AI業界への警鐘として受け止めるべきだ」と語った。 米シリコンバレーのベンチャーキャピタリスト、マーク・アンドリーセン氏は1月26日のSNS「X」で、ディープシークの「R1モデル」は、AIの「スプートニク・モーメント」だと投稿した。アンドリーセン氏は、1950年代後半に、宇宙競争の開始を告げた旧ソビエト連邦による人工衛星の打ち上げに例え、米国が抱く危機感を表した。米紙「ワシントンポスト」によると、今回の開発費は約560万ドル(約8.7億円)で、米国製の1割程度とされる。ディープシークには、エヌビディア製の格落ちチップ「H800」 約2000個が、一方、米国製は最新型「H100」数万個が使用されている。 主要テック企業3社は1月21日、米国におけるAIインフラの拡大を目指す新会社「スターゲート」を設立すると発表した。オープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)、ソフトバンクの孫正義CEO、オラクルのラリー・エリソン会長は同日、ホワイトハウスでトランプ大統領と共に設立を発表。同プロジェクトには今後、米国内で最大5000億ドル(約78兆円)の投資が予定されている。トランプ氏は、「世界的なテックの巨人が『スターゲート』を設立する。技術とAIは全部”Made in USA”にする」と述べた。計画には、全米20カ所のデータセンター建設も含まれている。最初となる約50万平方フィートのデータセンターは、米テキサス州に建設する予定となっている。 米ホワイトハウスのレビット報道官は1月28日、ディープシークが国家安全保障に与える影響について、国家安全保障会議(NSC)が精査していると明らかにした。ディープシークが開発したAIの使用を制限する動きが、世界の企業や政府機関の間で広がりを見せている。ディープシークの生成AIについて、データ流出の懸念から、世界で数百に及ぶ企業などが職員に利用制限を課している。この懸念について、中国外務省は「企業の問題は企業に確認してほしい」としながらも、「中国は企業や個人に対して違法なデータの収集や保存を要求したことはない」と反論した。 自民党の小野寺五典政調会長は1月31日、ディープシークに尖閣諸島が日本の領土かと尋ねたところ、「中国固有の領土と事実と違う答えが返ってきた」と指摘した。小野寺氏は「当たり前のことをねじ曲げてしまうのがディープシークだと心配している。危ないのでダウンロードはやめていただきたい」と主張した。 ★ゲスト:今井翔太(AI研究者)、鈴木一人(東京大学公共政策大学院教授)、小谷哲男(明海大学教授) ★アンカー:末延吉正(ジャーナリスト/元テレビ朝日政治部長)