わずかな風でも延焼の恐れ…「飛び火」の危険性を検証
社会|
03/29 23:30
今週も各地で相次いだ山火事。番組では、延焼拡大の要因とされる「飛び火」を検証。再現取材で見えてきた、危険性と注意点とは。(3月29日OA「サタデーステーション」)
■離れた家屋も「飛び火」で被害
報告・藤澤愛ディレクター(29日
愛媛・今治市)
「火種などの鎮静化のためでしょうか、焼け焦げたあとに消火剤を撒いています」
愛媛県今治市で発生した山火事は29日で7日目。消防や自衛隊は、上空などから「熱源」を確認して残り火の消火にあたっていました。今も333世帯、611人に避難指示が出ていて、通行止めになっている場所も…。市は週明け31日の「鎮圧」を目指しています。
今治市の山林で発生した今回の山火事。すぐ近くに駅や名産品の今治タオルの工場もあります。火の手は、日を追うごとに拡大していき、焼失面積は442ヘクタールまで及びました。
ここまで火の手が広がった要因は建物などに「飛び火」したことが指摘されています。現場付近で撮影された映像では、火の手が上がるすぐそばで“火の粉”のようなものが舞っているのが確認できます。現場近くの駅でも、火の粉が確認されています。今治市消防団の男性が消火にあたっていました。
今治市消防団の檜垣さん
「山から葉っぱとか、火が付いたまま飛んでくるので…」
■“飛び火”を可視化
専門家と検証
実際、どのように飛び火するのでしょうか?サタデーステーションは専門家監修の元、焚き火から出る火の粉の動きを可視化してみました。
焚き火から出た火の粉はパチパチと音を立てながら舞っています。このときの風は山火事が発生したときと同じ風速4m。火の粉の動きを可視化するため赤外線カメラに切り替えると、肉眼ではハッキリ見えなかったさらに遠くまで飛んでいくのが確認できます。火元から、およそ1m離れたところに新聞紙と藁を置いてどう飛び火するのか検証してみると…
報告・井本友理ディレクター
「今、新聞紙に火が付きました。みるみるうちに火が広がっていきます」
わずかな風でも、無数の小さな火の粉が集中的に飛び火することで、あっという間に大きな炎となって燃え広がるということが分かりました。別の実験映像でも、木に大量の飛び火をさせたことで、数十秒後には大きな火柱をあげ、木を丸ごと燃え上がりました。
東京理科大学火災科学研究所
松山賢教授
「小さな火の粉であっても、可燃物に付着しますと、そこから燃え広がるということが十分起こりうる」
山火事が多いこの時期、どんな注意が必要なのでしょうか?
東京理科大学火災科学研究所
松山賢教授
「しばらくは乾燥状態というのが続くと思いますので、灯油なんかも、もしかしたらあるかもしれません。いかに延焼拡大を防ぐかというところに注意を払っていただければと思います」
■焼失面積
すでに例年の6倍超
高島彩キャスター
「今年は例年の山火事とどう違うのでしょうか?」
板倉朋希アナウンサー
「大きく異なるのが全国の山火事による焼失面積です。2019年から5年間の平均でみると、1年に全国で705haが焼失しています。それが今年は、1カ所の山火事で100haを超えるケースが6件、なかでも先月、大船渡市で起きた山火事では2900haが焼失していて、これは山手線の内側の46%が燃えてしまったことになります」
高島彩キャスター
「これを見ても今年は本当に大規模な山火事が発生しているのがわかりますよね」
ジャーナリスト柳澤秀夫氏
「背景には温暖化があるのではないかと専門家は指摘していて、気温が上昇して乾燥している。日本はもともと湿潤な気候なので、大きな山火事が起きにくいと言われたんですが、こうした常識が通用しないということになると、過去にとらわれない新しい対策を急ぐ必要がありそうですね」
高島彩キャスター
「気候変動などによる乾燥や強風だけでなく、人が残したモノや火の不始末などでも山火事になることありますから、山での火の取り扱いには十分ご注意ください」