異常気象に農家悲鳴「3割は規格外」人気ドライフルーツが農業を救う?
社会|
06/12 19:57
軽井沢で人気のスーパーマーケット・ツルヤ。
中でもファンが多いのが、しっとり食感で優しい甘さの「やわらかドライフルーツ」。原材料は、傷が入り、サイズもバラバラの規格外の果物。どのように美味しい人気商品に仕上げるのか。生産者にも目を向けた「こだわりのものづくり」を探りました。(サタデーステーション
井本友理)
■近年続く「異常気象」レモンの生産にも大きな影響
広島でレモン農園を営み、ツルヤのドライフルーツ用に卸している宮本さんにお話を伺いました。
レモン農家
エコレモングループ会長
宮本悟郎さん
「最近寒波の来る度合いがすごくタイトになっていて、3年から5年に1回ぐらいは寒波が来る」
インタビューした2025年2月はレモンの収穫シーズンでしたが、ふわりふわりと雪が舞っていました。レモンは雪が積もると表面が凍ってしまい、茶色く跡が残るといいます。そうなると商品価値が無くなってしまうため、収穫作業に追われていました。
JAひろしま せとだ支店によると、1年間に収穫されたレモンのうち、およそ3割が規格外でした。規格外のレモンの多くは、果汁用などとして安い価格で売らざるを得ないといいます。異常気象の影響を受けた規格外レモンは、安価になってしまう。厳しい農業経営を救う切り札がドライフルーツです。
■ドライフルーツ用だから実現した「適正価格」での買い取り
ツルヤのオリジナルドライフルーツを手掛けているのは、「株式会社
南信州菓子工房」。工場の冷凍庫には、全国から届いた様々な果物が並べられていました。その多くは傷や跡の入った、サイズもバラバラの規格外です。
南信州菓子工房では、ドライフルーツの原料として使う規格外の果物を、果汁用の約2倍の価格で買い取っているといいます。時期や果物の種類によってやや異なるものの、基本的に高い価格で取引されています。
南信州菓子工房
製造部長
宮島清治さん
「(ドライフルーツの)需要にお応えできるという意味と、生産者と我々がWin-Winの関係になれる適正価格」
レモン農家
エコレモングループ会長
宮本悟郎さん
「毎年安定した計画量を買い取ってもらえることで、5年10年を見据えた取り組みができることが大変メリットがある」
■素材らしさにこだわるための2つのポイント
南信州菓子工房はドライフルーツの人気を伸ばし続け、2024年は約17億9000万円の売上高でした。
今回は代表商品である「輪切りレモン」の舞台裏を取材。2つのこだわりが見えてきました。
その1
「手作業」
規格外のため、ほとんどのレモンに傷や跡がついています。それらをきれいに取り除くのは、人による手作業。レモンをスライスの機械に並べる時、レモンの種を取り除く時も手作業です。
南信州菓子工房
製造部長
宮島清治さん
「逆にメリットがあって、それだけ手間がかかるということは一つ一つ非常に愛着を持って商品に育てていける」
その2
「地域の伝統」
三大都市圏から離れている南信州。最中や甘納豆など、砂糖を使って長持ちさせるお菓子作りが盛んでした。その伝統を応用したのが、果物にシロップを濃縮させるための「真空濃縮窯」です。特徴は3つあります。
・短時間で糖分が浸透
・徐々に糖度を上げるため、しわになりにくい
・低温で沸騰するため、加熱のしすぎで素材の風味が失われない
■なぜ国産ドライフルーツに挑戦?
外国産が多いドライフルーツ。国産の果物を使い、半生仕上げの商品がなかったためチャレンジしたといいます。
創業当初は売上が伸び悩んでいました。
南信州菓子工房
製造部長
宮島清治さん
「当社の代表商品になった輪切りレモン。これを販売した3年目くらいから、ツルヤさんをはじめ、全国のスーパー、コンビニエンスストアでの取り扱いが始まりまして」
素材の美味しさを最大化する、芯の通ったものづくりが実を結びました。
■ドライフルーツが農業を救う?
国産の果物を取り扱う中で見えた課題が、「異常気象の影響」「農家の高齢化」です。そこで大分県佐伯市と協力し、大規模なレモン農園を始めました。レモン農家の宮本さんも、この取り組みに賛同しています。
レモン農家
エコレモングループ会長
宮本悟郎さん
「ほとんどの企業が、思ったほど儲からないから撤退している。レモンをこれからも大切にして、農業と販売と考えていただけることが産地にとって大変ありがたい」
長野の工場から、日本の農業を支えます。