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軽バンの車内でくつろぐ佐藤さん

軽バンガール~私がこの道を進むワケ~

5月27日(月)深夜1:20~放送

番組概要

「働くために生きるのか、生きるために働くのか…」人生で誰もが一度は直面する問いに対し、早々に答えを出し、動き出す若者がいる。佐藤眞理さん(26)はそんな若者のひとり。フリーランスのwebデザイナーだ。一度は新卒で会社員になったものの、入社3カ月で退職。社会人1年目にして第二の人生を歩み始めた。佐藤さんは定住せず、完全リモートワークという勤務形態を生かし、全国を旅しながら仕事をしている。

彼女のようにリモートワークで収入を得ながら、住む場所を転々とする人々を遊牧民=ノマドに例え「デジタルノマド」と呼ぶ。フリーランス市場の専門家によれば、その数は世界で3500万人を超えていて、10年後には10億人近くに達する試算もある。一方で「地方創生」や「労働力確保」という文脈から「デジタルノマド」に注目する自治体や企業が増えていて、新たなサービスや誘致策が次々と打ち出されている。

ひと昔前までは「夢物語」として語られていたライフスタイルを体現する若者が増えた背景には「安定」の概念の変化がある。大震災やコロナ禍、紛争などを経て、感じた漠然とした不安――「明日何が起こるかわからない」。そんな時代を生きる彼らは会社などの組織に依存せず、いかに身軽でいられるかを重視し始めているのだ。こうした新しい価値観とともに広がりを見せる「デジタルノマド」。普段の暮らしや仕事、独自のコミュニティなどの取材を通し、「新しい安定のかたち」を求める若者たちの姿を追う。

「定住しない」多拠点ライフ

仕事場は海辺に停めた軽バン。ハッチを開けて潮騒を聴きながらパソコンに向かう

その“仕事場”にはキーボードを叩く音に交じって潮騒が響いていた。長崎県の離島、壱岐島の海辺に停めた軽バンの中で、パソコンに向かう佐藤さんはフリーランスのwebデザイナー。企業のHPや広告の画像などを制作している。仕事兼寝食の場にしているのはおよそ30万円で購入した中古の軽バンだ。自ら少しずつ改造して、落ち着ける空間に生まれ変わった。彼女は車中泊をしながら移動し、全国各地のゲストハウスや友人宅など居住先を転々とする生活を送っている。「日常からストレスを溜めたくない」と語る佐藤さんが滞在するのは自然豊かな場所が多い。「日常的にきれいな自然が近くにあると自分がすごくプラスの感情で居続けられる」のが理由だ。日本全国を軽バンで移動しながら「人生の豊かさ」を追い求める彼女の“非日常的な日常”に密着する。

選んだのは「組織に属さない」生き方

会社員時代の佐藤さん

今生きることを精一杯楽しんでいる佐藤さんがこの生活を始めたのは3年前の23歳の時だった。埼玉県出身の彼女は大学卒業後、都内の会社に新卒で正社員として就職した。しかし、満員電車に揺られ、定時に出社し、仕事をこなす毎日。「嫌な仕事をして発散するために遊んで、お金が消えて、また仕事をしてお金が消えて…これを繰り返すのって意味あるのか」と思うようになり「自分は何のために生きているのか」と自問した。
入社して間もなくメンタルヘルスに不調をきたした。そして、入社から3カ月、退職を決めた。

壱岐島の浜辺を歩く佐藤さん

もともと旅が好きだった佐藤さんは、退職をきっかけに壱岐島を訪れ、島のゲストハウスでアルバイトをしながらwebデザインの勉強を始めた。九州の豊かな自然に触れ、「自然がある生活をしていたら自分がいかにストレスを受けていたかが分かった」。そして、「不必要な我慢をしない」と決め、理想の生き方を追いはじめた。フリーランスとして働くためのスキルを徐々に身に付け、組織に属さず、場所や時間に縛られない人生を歩み始めた。
現在は週5日で勤務地を縛られない業務委託を受けていて、会社員時代の約1.5倍の月収を得ている。

佐藤さんのように入社してもすぐに辞める若者が後を絶たない。若者の間で何が起きているのか?佐藤さんの当時の取材などを通して若い世代の仕事観の変化を描く。

増える「デジタルノマド」の実態

「デジタルノマド」の確定申告を支援するイベントの様子

佐藤さんのようなフリーランスは「デジタルノマド」と呼ばれ、現在、世界中で3500万人にも上ると言われている。それに伴い、日本国内でも「デジタルノマド」のコミュニティは拡大。各地で交流イベントが開催されている。本企画では長野県で開催されたイベントを取材した。「デジタルノマド」の確定申告を支援するイベントで会計ソフトのサービスを扱う会社が主催した。確定申告という面倒な作業も自然豊かな湖畔の宿で仲間と楽しみながらやってしまおうという「デジタルノマド」ならではの発想だ。18人の定員に100人以上が応募した。会場には佐藤さんの姿もあった。こうしたイベントを通して新たなコミュニティができ、情報交換などを通して新たな仕事へと結びついていくことも多いのだという。

「新しい安定のかたち」を求めて

ハッチを開けたバンの後部から外を眺める佐藤さん

大震災やコロナ禍などを経て佐藤さんは感じたことがある。「定年したらこういう生活をしようとか叶えられる保証は全くない。もしかすると、またコロナや戦争で、来年海外行けなくなるかもしれない。やれるうちにやった方がいい。それをずっと繰り返していく人生の方がいい」。こうして佐藤さんはまた新たな目的地に向けて出発した。

デジタル化で多様な働き方ができるようになり、将来のために我慢するのではなく、今を楽しく生きようようとする若者たち。「不安定な今の時代、組織に依存しすぎず、いつでも動ける『身軽さ』こそが『新しい安定』になりつつある」と専門家は指摘する。その具体的な“かたち”として今後も増えることが予想される「デジタルノマド」。彼らを通して時代とともに大きく変化する若者の仕事観や人生観を描く。