トランプ発言など情報の真偽検証 メディアの「ファクトチェック」【フェイクの波紋】
国際|
06/14 15:37
今SNS上では、意図的に作られた嘘の情報や、事実と異なる誤った情報による波紋が広がっています。その情報が、事実かどうかをメディアが検証する「ファクトチェック」の取り組みを取材しました。
アメリカ
トランプ大統領
「我々は彼ら(日本)を守るために数千億ドルを支払っている。彼ら(日本)は何も払わない」
在日アメリカ軍の駐留経費について、日本は支払っていないと発言したトランプ氏。すると翌日、朝刊にはすぐに、この発言は「誤り」であると指摘する記事が掲載されます。
朝日新聞で、安全保障などを専門に取材してきた園田耕司デスクは、9年前から、政治家の発言などが、正しいかどうかを判定する「ファクトチェック」の連載を担当してきました。
朝日新聞
園田耕司デスク
「まず自分にある専門的な知識から、気づきがある。実際に日本が駐留経費を支払っていて、金額も大体は分かる」
さらに…。
園田耕司デスク
「ウェブ上でも公開されている、防衛白書というものがあります。 駐留経費について、日本政府がどのように取り組んできたか書いてある。一次情報としてはこちらの文章で確認作業に入る」
防衛白書にはアメリカ軍の駐留経費は1978年度に、日本が支払いを開始したと書かれています。
園田耕司デスク
「防衛省の担当課の方に確認作業を取ります。書いた記者だけではなく、複数の目によって徹底的に検証し直す。そのうえで(記事を)出す」
園田氏がファクトチェックに取り組むきっかけは2016年、トランプ氏の虚偽や、誤解を与える発言が目立ち始めたころでした。
園田耕司デスク
「トランプ氏は、虚実ないまぜの主張を時々される。例えばニューヨーク・タイムズのファクトチェックをする記者たちが10人ぐらい、次々と討論の内容についてファクトチェックをしていく。(当時)日本で政治記者をやっていたのですが、政治家を取材していると、この主張って本当正しいのかな?ミスリードではないか?と思うことがあった。ファクトチェックをアメリカで見た時に、この手法を日本に取り入れれば、政治家の『本当かな?』と思うような言葉もチェックできるのではないかと思い、日本でファクトチェックを始めた」
朝日新聞も、2017年にトランプ氏の発言について、ファクトチェックをする記事を取り上げています。
日米のメディアによるファクトチェックが行われるなか、アメリカでフェイクが民主主義の根幹を揺るがす事件が起きるのです
アメリカ
トランプ大統領
「敗北宣言をするのは非常に難しいだろう。大規模な不正があったことを私たちは知っているからだ」
トランプ氏は2020年の大統領選の後、敗北を受け入れず、真偽不明の発言を繰り返し、支持者をあおります。
その後に起きた、議事堂襲撃事件はトランプ氏の発言などをもとに真偽不明の陰謀論が生まれ、事件を誘引したことも原因と言われています。
園田耕司デスク
「(事件の)ベースになっていたのが、 偽情報的な部分も非常に大きい。本当のファクトが分からない世界に足場を作って政治的主張が積み重なって、自分の主張や考え方をさらに強める情報を選択しやすい環境ができている。誤った情報というのは、分極社会を生み出すだけではなくて、民主主義社会を壊してしまうような暴力行為を起こす可能性がある」
近年、生成AIなどの発達などにより、フェイクはより巧妙なものになっています。そうしたフェイクに対抗するため、朝日新聞は、「ファクトチェック編集部」を立ち上げます。
国際的なファクトチェック機関の考え方を基に、独自の基準を作り、さまざまな情報について正しいか否かを判定していきます。
園田耕司デスク
「新しく今回、設けたのが、フェイクというところです。画像、動画、音声などが、改変、合成されたり、AIなどで生成されたりして事実の誤りがある。フェイクの判断の基準として取り入れています」
SNSなどでも氾濫するフェイク。その出現に歯止めが効かなくなりつつある今、メディアが行うファクトチェックは、フェイクに対抗する手段の一つです。
園田耕司デスク
「記者は専門的な知識を持ち、 一次情報にアクセスできる。ジャーナリズム機関によるファクトチェックは、健全な民主主義社会を作り出す意味でも非常に重要」