【わざわざ行きたい店】予約推奨!思わず二度見!驚きの1個170円⁉ 口の中で溶けるシフォンケーキ!メレンゲが命の食感のトリコに!『cake Kanon』(福岡・川崎町)【まち歩き】
ひと口食べて、思わず声が出た。
甘さは、控えめ。 ふわふわで、というより、口の中で溶けていくという感覚。舌の上でほどけて、なめらかに消えていく。
これが、1個税込170円〜。
福岡県田川郡川崎町。商店街の一角にある『cake Kanon(ケーキ カノン)』のシフォンケーキです。
■値段を二度見してしまいました
バニラ、抹茶、柚子。 どれも1個170円〜200円。
6個買っても、約1,000円〜1,200円。
スイーツの価格が軒並み上がっているいま、この数字はちょっとした事件です。おやつに、手土産に、自分へのごほうびに。「ちょっと多めに買っちゃおうかな」が、罪悪感なしにできる。
しかも、味は本気。 派手さはないけれど、食べ終わったあとに「あ、また食べたい」が残るタイプのおいしさです。
このお店、某ふるさと納税サイトのお菓子部門で日本1位になったこともあります。注文が一気に増え、しばらくその座が続いたのだそう。
なのに、こんな値段のままなんです。
■商店街の、緑のドア
平成筑豊鉄道・豊前川崎駅から歩いてすぐ。
まっすぐに伸びる、長い商店街。アーケードがないぶん空が広くて、丸いランプの街路灯が、どこか映画のワンシーンのような景色をつくっています。歩いているだけで、思わずカメラを向けたくなる通り。
その一角に、緑のドア。
青を基調とした女の子のイラストが描かれた看板。
「みんな、かわいいって言ってくれるんですよ」
そう笑うのが、店主の樋口か代さん。
正直、初めて行くとちょっと迷います。でもそれも含めて、たどり着いたときの「見つけた!」がうれしい。
■つくるのは、シフォンケーキだけ
店内に並ぶのは、カットされたシフォンケーキ。
やわらかすぎて、袋に詰めるところまで人の手には任せられない。だから焼くところから包むところまで、樋口さんがひとりでやっています。
味の秘密を聞くと、答えは即座に返ってきました。
「メレンゲ。それが一番だと思います」
卵は、特別なブランドにはこだわらない。
「おやつって、本当はそんなものだと思うんですよ」
でも、観察はものすごく細かいんです。
「今、夏でしょう。これだけ暑かったら、鶏さんもきついみたいで。水をたくさん飲むから、卵白がちょっと薄くなるんですよね」
夏の卵白は泡立ちにくい。けれど、そのぶんしっとりと焼き上がる。 冬は粘りが出て、安定する。
「同じ分量でしても、やっぱりこれだけ違うんやねって」
特別なことは何もしていない、と言いながら、季節ごとの卵の"顔色"を、この人はちゃんと見ている。あの溶けるような食感は、たぶんそこから来ています。
おすすめの食べ方
そのままでも、じゅうぶんおいしい。 でも、いくつか楽しみ方があります。
・冷やして食べる。
夏は特に。しっとり感が増して、口どけがさらになめらかに。
・ホイップやフルーツを添える。
甘さ控えめなので、生クリームを添えても重くなりません。いちごやバナナをのせれば、おうちで即・カフェ気分。
・数種類を買って、食べ比べる。
せっかくなので、いくつかまとめて。この値段だからこそできる贅沢です。柚子の爽やかさは、夏に特におすすめ。
■ただし、「行けば買える」店ではありません
ここだけは、先にお伝えしておきます。
予約推奨です。
売り切れることが多く、その日に行っても手に入らない可能性があります。ふらっと立ち寄って買える、というお店ではない。
なぜか。理由を聞いて、納得しました。
「本当は、パッと来ていつでもある、っていうのがお客様には一番いいんです。でも、ひとりだとそれができない。残しても、捨てるわけでしょう」
――廃棄が、いちばんもったいないんですよ。
一生懸命つくったものを捨てるのは、やっぱり嫌なもので。 そう言って、樋口さんは少しだけ困ったように笑いました。
作りすぎない。だから捨てない。だから、この値段のまま。
170円という数字は、樋口さんが"守っている"数字なんです。
だから、電話を一本。 それだけで、確実に手に入ります。
■「ここに来ないと、買えません」
このシフォンケーキ、ほかの場所では買えません。 支店もなければ、卸しもしていない。
「もしこれが30代のときだったら、もう1店舗とか思ったかもしれないですけど」
売り場を増やす、という発想がそもそもない。
ここに来ないと、買えません。 それが、こだわりなんだそうです。
その背景にあったのは、この町に"名物"をひとつ作りたい、という思いでした。おみやげに選べるお菓子が、この町にもあったらいい。そう考えて、自分でつくった。
いまでは糸島から、佐賀から、朝倉から、このドアを目指して人がやってきます。
■ひとりで、およそ18年
樋口さんがこのお店を始めたのは、50歳のとき。
それまではご両親から継いだ婦人服店を営んでいて、お菓子は完全に趣味でした。町にできた小さなケーキ屋の店主に「よかったら教えましょうか」と言われたのが、すべての始まり。
「こんなところでケーキ屋さんして誰が来るん、って言われましたよ」
来んよねー、と思いながら始めて、およそ18年。
お話ししていて印象的だったのは、その語り口の軽やかさでした。声に張りがあって、笑いながらぽんぽん言葉が出てくる。
「ひとりだから、人間関係のストレスがないんですよ。ちょっと今日は午後から休もうかなと思ったら、休みますって」
したらしただけ返ってくる。怠ければ、怠けただけ自分に返る。 そのシンプルさが、性に合っているのだそう。
お客さんからは、いつもこう言われるといいます。
――細く、長く続けてくださいね。
「本当に、細く長く。でも、これでいいかなと思ってます」
■帰り道に
袋を提げて、商店街を歩きました。
かつて炭鉱で栄え、全国から人が集まったこの町。長い直線の通りには、いまも独特の空気が流れています。
「なんかね、変なエネルギーを感じるの、ここって」
樋口さんはそう言って笑いました。スピリチュアルなんて信じてないけどね、と付け足しながら。
その通りの真ん中、緑のドアの向こうで、今日もオーブンが回っています。 170円のシフォンケーキが、ひとつずつ焼き上がっていく。
わざわざ行く価値がある。 というより――わざわざ行かないと、食べられません。
電話を一本かけてから、出かけてみてください。
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■『cake Kanon(ケーキ カノン)』
住所:福岡県田川郡川崎町413-11
電話:0947-73-2372※完売することが多いため、事前予約がおすすめ。
営業時間:10:00〜18:00(売り切れ次第終了)
定休日:月・第3日曜
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※情報は2026年9月時点のものです。記載の内容は変更している場合があります。事前にご確認ください。
■ cake Kanon(ケーキ カノン)
住所:福岡県田川郡川崎町413-11
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